※本稿は、加藤和則『血管細胞を強くすれば熱中症は予防できる 熱中症やヒートショックに強い身体に変える3つの成分』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
熱中症による救急搬送10万人超え
熱中症が社会問題として本格的に注目されるようになったのは、2010年(平成22年)からです。それまで夏季に1万人から2万人台で推移していた全国の救急搬送数が、この年を境に5万人(夏季)を超えるようになりました。
私たちが熱中症を本格的な研究テーマとして取り上げたのは、今からおよそ8年前のことでした。きっかけは、東洋大学が取り組んでいた東京オリンピック・パラリンピックに向けた研究プロジェクトへ参加したことです。2017(平成29)年、東洋大学のプロジェクトは文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」に採択され、私たちはその中の熱中症対策研究の一翼を担うことになったのです。
「穴の空いた水道管」に水を注いではいないか
熱中症に関する研究を進めてきた中で見えてきたのは、熱中症を単なる「水分不足」と捉えることの危うさでした。
想像してみてください。家の中に水を送る水道管が、熱でボロボロになり、あちこちに穴が空いている状況を。
そんな状態で、蛇口からいくら勢いよく水を流し込んだところで、肝心の場所まで水は届くでしょうか? 答えは明白です。途中の穴から漏れ出してしまうだけです。
実は、熱中症にかかった人の身体では、これと同じことが起きています。私たちの血管の内側を覆っている「血管内皮細胞」は、熱に対して非常にデリケートです。私たちの実験では、体温に近い37℃では元気に活動していた細胞が、40℃に達した途端、急激にダメージを受け、細胞の形態が変わっていき、それが継続すると死滅していくことが確認されました。
これが、熱中症が重症化する「構造的な障害」の正体です。つまり、水分や塩分を摂ることは大切ですが、その前に、まず「血管というパイプそのもの」を守る対策が必要不可欠なのです。



