中学受験にコスパを求める父親

結論から言ってしまうと、中学受験において「これをやっておけば成績が上がる」といった法則は存在しない。塾や家庭教師に安くはない額の費用を払っているのだから、なんとか成績を上げるのがあなた方の仕事だろう。そんなユーザー視点の発想は理解できる。

ただ、同じ受験でも大学受験なら、「この問題集をやっておくといい」というセオリーは今もあり、親自身の受験の成功体験を疑うことなく、そういう聞き方をしてしまうのだろうが、それは大学受験の話であって、中学受験では通用しない。

わずか11~12歳の子供が挑戦する中学受験に“絶対”はない。発達途中の小学生は一人ひとりの成長に差があり、同じ問題集を使っても成績をグングン伸ばしていく子もいれば、ある部分では伸びたけれど、他の部分ではまったく伸びない子もいれば、そもそも内容が難しくてお手上げという子もいる。

スコアテストの悪い子供とリビングルームの両親
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また、その日の気分にもムラがあり、調子のいいときもあれば、まったく勉強が身に入らないときもある。大人に近い高校生ならば、たとえ気分が乗らなくても、「今、自分は受験生なのだ」という自制心が働き、頑張ることができるかもしれない。だが、小学生にはそれができない。「この問題集さえやれば、成績が上がる」というコスパを求めること自体が間違っているのだ。

今どきの若い世代は映画や動画を倍速視聴するという。タイムパフォーマンス(時間対効果)重視で、要はちゃちゃっとストーリーを理解して、はやりの作品のポイントをおさえたいのだろう。ずいぶんせっかちな話だとは思うが、そんなタイパ信仰を中学受験に持ち込まれたら困ってしまう。というか、それは無理な相談だ。