中学受験塾はコロナ禍でオンライン授業と対面授業を選択できるケースが増えている。現在の小6は小4から入試本番までコロナの影響をもろに食らった“フルコロナ世代”だ。プロ家庭教師の西村則康さんは「対面授業の緊張感から解放されて集中力を欠き、宿題をさぼるクセがつきやすくなる。算数では比・割合・速さ・図形といった抽象概念の理解がオンラインではしづらい面があった」という――。
四面体、円錐と三角柱、六角形のピラミッドなど幾何学図形
写真=iStock.com/robuart
※写真はイメージです

足りないのは「知識」ではなく「演習量」

12月に入り、いよいよ入試本番が間近に迫ってきた。しかし、ここに来て「おやっ?」と思うことが続いている。長年、中学受験専門の家庭教師をやってきたが、今年の受験生は算数の途中式や線分図、面積図など、答えを導くために必要なものを書くことをやたらと面倒くさがる子が多いのだ。

その原因は何か。コロナ禍によるオンライン授業が影響していると感じている。

今年の受験生は、中学受験の勉強がスタートする小4の春にコロナの感染が広まり、入塾後すぐにオンライン授業に切り替わった。その後も感染状況のたびにオンライン授業になり、コロナ時代の受験生の中では最もオンライン授業が長い学年となる。つまり、スタートの小4から入試本番を迎える小6までコロナの影響をもろに食らった“フルコロナ学年”なのだ。

この学年にとって最も痛手だったのは、「比」「割合」「速さ」「図形」など算数の重要単元の学習が続く5年生の大事なときにオンライン授業が多かったことだ。これらの単元はもともと小学生の子供には理解が難しく、この時期を境に算数に苦手意識を持つ子供が増える。抽象的概念の理解がまだ難しい子供たちに必要なのは、線分図や面積図などの図を書くことで、抽象的なものを具体的にイメージさせることだ。こうしたやり方を塾で学習し、実際に手を動かしてみることで理解を深め、いろいろな問題を解いてみることで応用力を養っていく。

ところが一方通行のオンライン授業では、子供たち一人ひとりの手の動きまではチェックできない。先生が画面でチェックできるのは、せいぜい生徒一人ひとりの顔くらいで、画面の外で手を止めていようが、落書きしていようが、漫画を読んでいようが正直分からない。親が横で張りついていない限り、さぼろうと思えばいくらでもさぼれてしまうのだ。また、休校中は宿題のチェックもゆるくなる。塾に通っていれば、「宿題をやって来なかったら先生に怒られる」からやっていくけれど、オンライン授業の期間はその緊張感から解放され、宿題をさぼるクセがつきやすくなる。