中学受験する子のサポート役は母親という家庭が多いが、コロナ禍で父親が関わることも増えた。だが、それが裏目に出ることもある。プロ家庭教師の西村則康さんは「仕事モードのコスパ・タイパ思考で第一志望校合格までの近道を追求する傾向があり、そのやり方がかえって子供の成長の妨げとなってしまうこともあります」という――。
子供をしつけている父親。
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

コロナ禍で急に中学受験に関わりだした父親

近年、中学受験に熱心な父親が増えている。

特に、コロナ禍でリモートワークが浸透してからは、それまで子供の教育を母親に任せっぱなしだったことを取り戻すかのように、「父親である自分が頑張らねば」と前のめりになっているように感じる。現にここ2、3年、私のところにも父親からの相談が相次いでいる。そのこと自体は悪いことではない。しかし、彼らの多くはこう尋ねるのだ。

「何をやらせれば成績が上がりますか?」

中学受験といえば、これまで長い間、母親と子供の二人三脚が主流だった。一般論にはなるが、子供に対しての共感力は母親のほうが高く、「ちゃんと勉強しなさい!」「宿題はもう終わったの?」といった日々の小言はあっても、「いつも頑張っているね」「できなかった問題が解けるようになってよかったね」と子供の頑張りや成長にもちゃんと気づいてあげることができ、それはそれでうまくいっていたように思う。

一方、「共感」がベースにある母親と子供の関係性と違って、父親は子供に対しても「これをやるべき」「○○をしなければいけない」という思考になりがちだ。実績を出すことを常に求められるシビアな職場のモードそのままに子供の勉強に対しても「こうすれば、こういう結果になる」という因果関係を求めようとする。しかし、相手が小学生の子供であることを忘れてはいけない。