トヨタ自動車の社員研修では、トヨタ生産方式を理解するために対話を通じて学ぶ機会がある。いったいどんな内容なのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんによる連載「トヨタがやる仕事、やらない仕事」。第9回は「トヨタの独特な研修内容」――。
グラスに牛乳を注いでいる
写真=iStock.com/alvarez
※写真はイメージです

カイゼン活動の発表会「自主研」

本稿ではトヨタの働き方を確立した社内での研修、教育について述べます。

といっても、特に変わったやり方をしているわけではありません。新人研修、管理職研修、役員研修とさまざまなコースがあり、誰もが受講します。座学が主になっていて、講師は社内、社外とさまざまです。

【連載】「トヨタがやる仕事、やらない仕事」はこちら
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他社にないのは自主研の活動ではないでしょうか。トヨタ生産方式のカイゼン活動の発表会が自主研です。生産現場、関係会社、サプライヤーでも行われています。

事務技術系と呼ばれる事務や開発の部署でも自主研の活動は始まっています。自主研は日本だけではありません。世界各地で行われています。

この連載を読んだ人が「トヨタらしい教育だな」と感じるのはやはりトヨタ生産方式に関わるところでしょう。本稿ではその点をまとめてあります。

豊田章男社長が定義する「トヨタ生産方式」とは

トヨタの教育、研修で他社との違いがあるとすれば、それは対話を重視していることではないでしょうか。徒弟制度で教育していた当時の気配が色濃く残っているといってもいいでしょう。

トヨタイムズという同社のオウンドメディアを見ると、教育研修の様子がそのまま配信されています。例えば社長の豊田章男さんがトヨタ生産方式とは何かについて話す時でも、一方的に話すことはしません。まず、研修に来た参加者に質問をします。

こんな具合です。

話しかけているのは豊田さんです。講義はトヨタ生産方式について、豊田さんの解釈を話していきます。