トヨタ自動車の「カイゼン」と呼ばれる生産方式は、自動車の製造ではなく問題解決を目的としている。では、問題点を正確に見つけるにはどうすればいいのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんによる連載「トヨタがやる仕事、やらない仕事」。第8回は「カイゼンのプロが説く『問題の見つけ方』」――。
自動車の生産ライン
写真=iStock.com/pierrephoto
※写真はイメージです

仕事とは「方針管理」と「問題解決」である

トヨタでは「仕事とは方針管理と問題解決だ」と徹底的に教えます。

ではまず、方針管理とは何でしょうか。ある幹部はこう説明します。

「トヨタのビジネスプラクティスって、方針管理と問題解決のことなんです。昔は研修で教わりました。『方針管理と問題解決はビジネスの根幹だ』って。

方針管理とは、今年はこちらの方向へこれだけ変化するぞということ。新しいことをやるのが方針管理。そして、方針管理で1度、成功を収めたら、PDCAを回す。

PDCAとはご存じの通り、プラン・ドゥ・チェック・アクションです。PDCAで結果が出て標準化したらマニュアルを作ります。成功した場合はマニュアルにして成功のフットプリントを残す。そうすれば担当が変わっても同じようにプロジェクトを進めることができます。

また、PDCAのアクションとはトヨタでは標準化と横展開をすることなんです。標準化とはマニュアルを作ることで、横展開とは他の部署にも展開すること。そして、標準化した作業の場合、2度目からはSDCAと呼びます。プランではなく『スタンダード』から始まる。スタンダードのマニュアルです。ただし、スタンダードとはいっても、去年成功したことにちょっと上前を付ける。

これがカイゼンなんです。『去年の標準と今年の標準がある。そのギャップのことをカイゼンという』。先輩からはそう教わりました」

トヨタの謎の用語「マルシン、マルモ、マルマ」

話は少し横道にそれますが、知っておいたほうがいいトヨタの専門用語があります。

過去にない新車、例えばEVのbZ4Xみたいな新車を呼ぶ時、社内では○に新と書いて、マルシンと言います。次に、○にカタカナの「モ」と書くマルモはフルモデルチェンジした車のこと。

【連載】「トヨタがやる仕事、やらない仕事」はこちら
【連載】「トヨタがやる仕事、やらない仕事」はこちら

○に「マ」のマルマはマイナーチェンジした車です。念のため、マイナーチェンジとはちょっとだけランプなどの意匠を変えたり、エンジンを改造したりすることをいいます。

ただ、マイナーチェンジの場合、エンジンとボディのシャシーは変えません。ボディのプラットフォームやエンジンを変えた場合はフルモデルチェンジで、それはマルモになります。

さて、方針管理についてです。

方針管理という言葉は一般的ですが、トヨタでは少し違う意味で使っています。

どこの会社でも各期の目標を掲げる時、それを方針というのではないでしょうか。そして、その場合の「方針」とは、言葉通り、こんなことをやろうじゃないかという概括的な目標であり、そこに数値目標が加わるといったものでしょう。