「多忙な人間=有能」は本当か?
世の中のビジネスパーソンのなかにはいまだに多忙な人間が有能という誤解が蔓延しています。
「あいつはいつも忙しい。なるほど頑張っているのだな」
「彼女は毎日遅くまで残業している。頼もしい」
しかし、忙しそうにしている人の仕事を見ると、ほとんどはやらなくてもいいことだったりします。有能な人、仕事の本質をわかっている人は仕事を増やそうとは思っていません。
部品調達の話、呼び名についての話に戻ります。
ある部品作りにしのぎを削り、シェアが拮抗しているような会社がある場合はコンペをきちんとやります。そして、そちらはベータ型と呼んでいました。
ですが、カイゼン指導に入った同社のエクゼクティブフェローの友山茂樹さん、そして尾上さんのふたりが次のように決めました。「アルファ型、ベータ型という言葉ではみんなに伝わらないから、アルファ型を即決型と呼ぼう。ベータ型はコンペをやるのだから、特に言葉を用いなくていい」
即決型かそうでないかを決めるのは調達本部のプロたちです。彼らがきちんと決めています。また、従来の車種に対する部品は即決型を適用しますが、車種が変わったりした場合は即決型の部品を作っている会社であってもコンペをやることにしています。
こうした即決型の拡大はトヨタに限らず、どこの会社でも適用できるカイゼンではないでしょうか。部品調達の本質とは良質な部品を適正な価格で調達することにあるのですから。
こうしたカイゼンは従来の仕事に慣れ切った人間には思いつくことができません。トヨタでさえ、まだまだ「おばあちゃんの七面鳥」は残っているのです。従来からある仕事は時々、新鮮な目で見直すことが必要です。
カイゼンのプロが教える「問題の見つけ方」
前述の尾上さんは「問題の見つけ方」について、こんなふうに教わってきたと言っています。
「新人の頃は『問題を見つけろ』と言われても、そもそも問題点がよくわからないのです。生産ラインの横に立たされていたら、ラインには部品が流れてきて、ちゃんと自動車ができている。問題点がわからないからカイゼン提案ができない。すると、先輩に言われました。
『氷山は海に浮いていて、山頂だけが見えている。全体を見ようと思ったら海水のレベルを下げなくてはいけない』」