百聞は一見に如かず、そして「百見は一行に如かず」

トヨタはそんなことはしません。現場へ行かずに会議をやるなんて馬鹿なことはしません。だから、現地現物と繰り返し、何度でも言い続けるのです。

役員会で問題が出されたとします。担当幹部が現地に行ってないことがわかろうものなら、トップは「なぜ現場へ行かないのか」と問います。

担当幹部は恥じ入って、そのまま会議室を出て空港や駅に向かうために、自分の車に乗り込みます。

現地現物とは「答えはすべて現場にある」という意味なのです。

「問題がわからなければ現場へ行け。まずやってみろ、一行動が大事。考えるよりまずは行動しろ」

「百回見ているだけじゃ駄目だ。行動しながらちゃんと考えるんだ」ということです。

今の時代、上司が大声を出したり、圧迫したりはありません。しかし、「百見は一行いっこうに如かず」と冷静な顔で言われると、ぐうの音も出ないのではないでしょうか。

トヨタ社員が教わる「おばあちゃんの七面鳥」の話

トヨタが前例主義、形式主義を排していることは次のエピソードからうかがえます。

「おばあちゃんの七面鳥」という寓話です。トヨタの社員なら大半の人は聞いたことのあるお話ですね。

「お母さんが七面鳥をローストしようとして、当たり前の手順として、七面鳥の尻尾を切ってオーブンに入れました。娘が『どうして尻尾を切るの?』と質問したら、母親は『おばあちゃんがそうやっていたの。そうやると七面鳥がおいしくなると教わったわ』と答えました。

そういうものなのかと思った娘はおばあちゃんに聞きました。

『どうして尻尾を切るの?』

すると、おばあちゃんは答えました。

『昔はオーブンが小さくて七面鳥が入らなかったのよ。それで、尻尾を切ってオーブンに入れたんだよ』」

 サンクスギビングのディナーで食べるターキーをオーブンから取り出す手元
写真=iStock.com/GMVozd
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つまり、昔から行われてきた作業手順を疑ってみる態度が必要ということです。以前からやっていることが、今の時点でも正しいのか。それを検証しながら仕事をしましょうということの例話なのでしょう。