方針とカイゼンの違いとは?
一方、トヨタにおける「方針」は数値目標を指すわけではありませんし、明確に決まっています。
トヨタの「方針」とは過去にやったことのない新しい企画、新商品をリリースすることです。もしくは大きな変化が方針です。車の開発でいえば、新車のリリース。前記のマルシンのことです。
方針とは部を挙げて、「今年はこちらの方向に大きく変化するぞ」という発表です。
例えば売り上げを10%上げる、これまで100人でやっていた仕事を80人でやるのは方針とは言いません。これくらいの変化はカイゼンです。そして、カイゼンのことは日常管理と言います。
10%の売り上げアップは方針として発表するほどのことではないと考えているのです。
しかし、考えてみれば大変ですね。毎年、部を挙げてそれまでにやったことのない仕事に挑戦しなくてはならないのですから。車で言えばマルシン、マルモは方針に入ります。マイナーチェンジのマルマは方針ではなくカイゼンです。
会議をやるだけでは問題は解決しない
トヨタでもっとも知られている言葉は「現地現物」でしょう。現地へ行って現物を見ろということです。
トヨタは「問題解決の本質は現場にある」と考えています。徹底した現場主義の会社です。
一方、普通の会社の場合、営業成績が落ちたり、会社が傾き始めたりすると、幹部は会議を始めます。
それも問題を解決するための会議というより、「あいつの判断が悪かった」「市況が悪い」「不慮の事故がいけないんだ」「災害の影響が出た」……。
自分たちの弱点を見つめる会議ではなく、他人や環境に対して不満を述べ合う会議です。つまり、不振に陥った言い訳をみんなで考え始めます。
その結果、何人かが責任をとって役職を外れます。しかし、本人たちは「自分が悪かった」とは思っていないで辞めるわけですから、不満が募り、派閥を作ります。
派閥ができると陰湿な抗争が始まり、チームワークが崩れますから業績は向上しません。それどころかだんだん悪くなっていきます。そうして、結局はつぶれてしまうか、他社に買収されてしまう……。
業績不振、責任追及の会議、役職者の交代、派閥抗争、業績低下、倒産といった道をたどります。
会社の業績が悪くなるのは会社の風土から来ることが多いと思われます。形式主義、官僚主義、実行よりも手続き優先、本社スタッフが生産現場や営業現場に数字を押し付ける、現場よりも会議、本質を把握することよりも従来からある細かな手続きを優先する……。
こういうことを繰り返していればどんな会社でも傾きます。