「いかに問題が見えるようにするか。先輩は『10人でやっていた工程からひとり抜いてみろ。あるいは1時間でやっていた仕事を50分にしてみろ』と言いました。

これまで10人でやっていた作業を9人にすると、最初は一人ひとりの作業が増えます。どこかの工程だけが時間がかかり、遅れてしまう。すると、そこに問題があるんです。10人でやっていた時は問題が見えないよう、それぞれがカバーしていたわけですね。

このように問題点を見つけるためには組織をわざと不安定にして、作業を少し増やしてみたりします。これは生産現場だけではありません。事務の仕事でも3人でやっていたことをふたりにすれば問題点が見えてくる。カイゼンは現状をただ見ていてもできません。現状を不安定にしてみると、わかりやすくなるんです」

会議室で会議中
写真=iStock.com/GlobalStock
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あえて不安定にすることで問題点を炙り出す

尾上さんが言うように、作業がいつもそこで停滞しているといったようなあきらかな問題点はすぐに見つかります。

深いところに隠れているものはあえて状況を不安定にして見つける。見つかったらカイゼンする。

スムーズに流れるようになったらまた不安定にする。安定しているからといってそれは問題がないということではないというのがトヨタの考え方なのです。

そこまで自らに厳しくしている組織がトヨタなんです。世界と戦って生き残るためにトヨタは限界までやるのです。しかし、このことをトヨタはなかなか外に対しては言ってきませんでした。

また、「仕事や作業を意識的に不安定な状態にして問題点を見つける」ことは個人レベルでも行うそうです。納期が先であっても、とにかく仕事を早く仕上げることに集中する。そうしていると、どの部分が遅れやすいかわかる。

トヨタの強さはここにあります。他人に指摘してもらうだけではなく、自ら問題点や弱いところを発掘して直していくのです。すごい会社だと言わざるを得ません。

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