「他の誰かのために」本気で取り組む
本稿ではトヨタが大切にしているものについてまとめます。
それは「他の誰かのために」です。なんだ、きれいごとかと言う人もいるでしょう。しかし、組織の目的とは、きれいごとであるべきです。
「売り上げだ」「利益だ」「生産性の向上だ」というのは自分たちさえよければいいという自分勝手な目的です。
企業は社会が必要としなければ長期的に存在していくことはできません。
また、「売り上げだ」「利益だ」と言ってはばからない人は気持ちが緩んでいます。社会がそういう人のことをどう考えるかを想像できないようでは会社を経営していくことはできません。社会のことを見るのはもちろん、自社の目的や理念を語る時は慎重でなければならないし、また、特別に目立つようなことを言わなくていいのです。
社会への貢献、弱い立場の人を思うことを自分の言葉でなく、退屈だと思われてもいいから、普通の言葉で伝えることです。
トヨタは「他の誰かのために」とわかりやすい言葉、どこの国でも通用する言葉で語っています。
新任役員が最初にやる意外なこと
ある役員経験者から「トヨタには神社がある。新任役員の最初の仕事はそこにお参りすること。これは役員になった者だけの仕事だ」と聞いたことがあります。
トヨタの本社工場のなかには豊興神社という神社があります。役員以上がお参りできる神社で、一般の社員は入ることはできません。祀ってあるのはトヨタの物故者です。
かつてお参りは元日でしたが、今は正月明けの最初の出社日になっています。経営陣、役員が揃ってお参りすることになっています。1年間の物故者、つまり、トヨタで働いていて亡くなった方々を悼み、感謝するためのお詣りです。
もうひとつ、トヨタグループが建立した寺があります。蓼科(長野県)の聖光寺と言います。
「交通安全の祈願」「交通事故遭難者の慰霊」「負傷者の早期快復」のために建てた寺で、毎年7月の夏季大祭にはトヨタグループの経営陣が集まり、交通安全を祈願します。
他の自動車会社でここまでやっているところはないでしょう。社会的な責任を意識しており、「他の誰かのために」を考えている会社だからこそです。