「歴史と創業者を大切にしない会社はつぶれます」
しかし、社内に神社があることなどは秘密ではないけれど、世の中には伝わっていません。
わたしが話を聞いた役員経験者が話していましたが、「豊興神社にお参りすると、トヨタの歴史をもっと知ろうという意識、社会に貢献しなければいけないという自覚が生まれる」とのことです。
また、豊興神社へは11月3日の創立記念日にもやはり幹部がお参りするそうです。トップが頭を下げ「長年、トヨタのために尽くしてくださって本当にありがとうございます」と感謝するのだそうです。
トヨタを作った先輩たちに感謝する、同時に歴史を大切にしている。
他の幹部からも聞いたことがあります。
「歴史と創業者を大切にしない会社はつぶれます」
トヨタの役員になると、そういうことをいっそう強く感じるのでしょう。
自動織機時代から脈々と受け継がれる歴史
トヨタ生産方式として知られる仕事のやり方があります。
「トヨタ自動車のクルマを造る生産方式は、『リーン生産方式』、『JIT(ジャスト・イン・タイム)方式』ともいわれ、今や、世界中で知られ、研究されている「つくり方」です。
トヨタのホームページには次のような説明が書いてあります。
「お客様にご注文いただいたクルマを、より早くお届けするために、最も短い時間で効率的に造る」ことを目的とし、長い年月の改善を積み重ねて確立された生産管理システムです。
トヨタ生産方式は、『異常が発生したら機械がただちに停止して、不良品を造らない』という考え方(トヨタではニンベンの付いた「自働化」といいます)と、各工程が必要なものだけを、流れるように停滞なく生産する考え方(「ジャスト・イン・タイム」)の2つの考え方を柱として確立されました」
さらに、トヨタ生産方式のルーツは次のように解説されています。
「ムダの徹底的排除の思想と造り方の合理性を追い求め、生産全般をその思想で貫きシステム化したトヨタ生産方式は、豊田佐吉の自動織機に源を発し、トヨタ自動車の創業者(2代目社長)である豊田喜一郎が『ジャスト・イン・タイム』による効率化を長い年月にわたり考え、試行錯誤の末に到達したものです」
この文章はトヨタの社員なら誰でも暗誦できるのではないでしょうか。それくらい、トヨタ生産方式と歴史観を大事にしているのでしょう。
ハウツーよりも、ビジネスパーソンとしての生き方を教える
ある社員はこう教えてくれました。
「歴史観は大事です。トヨタに入るとまず(豊田)佐吉翁の逸話から始まるんですね。
佐吉さんのお母さんが夜なべして機を織っていた。それが大変そうだから、佐吉翁は自動織機を発明した。(豊田)喜一郎さんは関東大震災の時、電車やバスは止まったけれど、アメリカのトラックが縦横無尽に走っていた。その姿を見て、こんな大変な時に日本人が自分たちの手で作った車が1台もないのは悲しい、と。