「内田社長退任」が再交渉の条件か

足元で、ホンダと日産の経営統合をめぐる事態はさまざまな方向に発展しそうな雲行きだ。一部の報道では、ホンダは日産の内田誠社長が退任すれば交渉を再開する意向という。また、別のメディアでは、2月下旬、日産の買収を狙っている台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)は、ホンダ、三菱自動車を含む4社での協業を提案したと報じられた。

横浜の日産本社
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さらに、政府関係者が米テスラによる日産出資計画を策定との報道も出ている。政府関係者が動いたところに、ホンダと日産の経営統合交渉の重要性が見てとれる。日産の苦境が深刻化し海外企業に買収された場合、わが国の自動車産業の空洞化や雇用に懸念が出ることも考えられる。それは、日本経済全体にとって大きなリスクになるはずだ。

「純利益98.4%減」日産の厳しい決算

これまで政府は、そうしたリスクにそれなりに準備してきたともいえる。準備の一つは、2024年に経済産業省が公表した「モビリティDX戦略」だ。同戦略は、わが国の自動車産業のさらなる成長にむけて、ソフトウェア分野での企業連携を重視する方針を示している。その方針は、今後の自動車のソフト化をにらんで、有力企業の協力体制を強化することを狙った動きだ。

足許、電動化、車載ソフトウェア開発競争の激化により、米・欧・中でも自動車業界の再編観測は高まっている。今度の展開次第で、トヨタ陣営にホンダと日産が接近する可能性もあるかもしれない。ホンダと日産の統合協議は、世界的な自動車産業の再編の動きの一つと考えられる。これから色々なことが起きるはずだ。

経営統合協議が破談になった2月13日、ホンダと日産両社は2024年4~12月期の決算を発表した。ホンダは二輪車の販売台数を上方修正したが、主に中国事業の悪化で四輪車は下方修正した。

日産の業況は一段と厳しい。純利益は前年同期比98.4%減だった。通期の純利益は800億円の赤字に下方修正した。日産は追加リストラ策を公表し、2026年度までに固定費で3000億円以上、変動費で1000億円を削減するとしている。