母親が自暴自棄に

家族は3人になった。

父親が亡くなる少し前、30代後半の兄はそれまで勤めていたIT系の会社を辞めて、突如フランスへ。ところが旅行中に強盗に遭い、身ぐるみ剝がされ命からがら帰国。一文無しになり、仕事も辞めてしまっていたため、一人暮らしが継続できず、実家に戻って派遣会社に勤め始めた。

一方、66歳の母親は父親が亡くなった後すっかり自暴自棄になり、保険の外交員の仕事はそこそこに、パチンコばかりに明け暮れる日々。もともと片付けが苦手だった母親は、年に数回部屋が汚いせいで父親とけんかになっていた。きれい好きな父親が存命中はある程度片付けてくれていたが、父親が他界後の実家は完全なゴミ屋敷に。足の踏み場のない台所の床には、いくつもの野菜が袋に入ったままドロドロに腐り、冷蔵庫ではゴキブリが凍死していた。

蛍光灯をつけた夜のキッチン
写真=iStock.com/Media Whalestock
※写真はイメージです

戻ってきた兄は、そんなことは気にもとめずに、テレビとエアコンのあるリビングに居座るようになる。床に布団を敷き、家の中心を占領した。

翌年2005年11月。母親はパチンコからの帰宅途中、坂道を自転車で上る時にバランスを崩して転倒。なんとか家までたどり着けたものの、トイレを利用した後に倒れて起き上がれなくなっていたところを運よく兄が帰宅して気付き、救急車を呼んだ。

母親は健康を取り戻すことができたのだろうか。この後、大木さんの人生は、軌道修正を余儀なくされるのだった。(以下、後編へ続く)

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