ハマった宗教は社会からバッシングを浴びていたが、脱会する気持ちがなかった母親。家の中はゴミ屋敷状態で、教祖の写真や教団の本が散乱し、ゴキブリも大繁殖。幼少期から10代の間、劣悪な環境で暮らすことを余儀なくなれた現在30代の女性と2歳下の妹。いったい、どのようにサバイバルしてきたのか――。(後編/全2回)
荒れ果てたキッチン
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【前編のあらすじ】関西地方在住の時任和美さん(仮名・30代・既婚)の両親は、できちゃった婚をし、時任さんが生まれた時にはすでに不仲。2歳下に妹が生まれると、父親は自分が経営する居酒屋に寝泊まりし、家に寄り付かなくなった。母親は、時任さんが3歳の時にカルト宗教に入信。自分の両親をだまして手に入れたお金を教団に寄付してしまうほどのめり込み、ついに勘当に。時任さんと妹は、教団なんかに行きたくなかったが、母親に捨てられないよう、必死について行くしかなかった。時任家の家庭のタブーはいつ、どのように生じたのだろうか。タブーのはびこる家庭という密室から、彼女はどのように逃れたのだろうか――。

夜型生活の小学生

関西地方在住の時任和美さん(仮名・30代・既婚)と2歳下の妹が小学生に上がると、カルト宗教に入信していた母親は配送業やスーパーのレジ打ちなど、掛け持ちで仕事をした。事実上の別居生活をする居酒屋経営の父親から送られてくる生活費が足りなかったからだ。

教団施設に通うのは、いつも母親の仕事が終わる夜。しばらく施設で過ごし、帰ってから食事と風呂を済ませるため、時任さん姉妹が寝る時間は、いつも日付が変わってからだった。

土日も母親は夜まで働き、その後、教団施設に通う。たまの休日は朝から晩まで教団施設で過ごした。

時任さん姉妹が通う小学校は、朝だけ集団登校。完全に夜型生活となっていた時任さん姉妹は、朝が苦手だ。もちろん母親は朝起こしてくれず、朝食も準備してくれない。集団登校の集合時間には間に合わず、いつも姉妹だけで登校していた。

通常、小学校5年生になると、集団登校班の副班長に、6年生になると班長に任命されるが、遅刻の多かった時任さんは5年生になっても副班長に任命されず、代わりに4年生の男の子が任命された。顔を合わせれば遅刻を注意してくる男の子だったため、時任さんは校内で彼を避け続けた。

やがて自分たちでバスに乗れるようになると、土日はよく祖父母の家に泊まりに行った。昼近くまで寝ていて、夜は遅くまでゲーム。眠れなくて夜中に抜け出して公園へ行くこともある時任さん姉妹に、早寝早起きの規則正しい生活を続ける祖父母は“遅寝遅起き“と驚いた。

日曜日の22時過ぎになると、仕事を終えた母親が迎えに来る。時任さんたちは食事も入浴も済ませており、母親が夕食を食べ終わると、荷物をまとめて祖父母宅を出発。教団施設に顔を出してからやっと帰宅した。