長期休暇は教団のセミナー

夏休みなどの長期休暇も、母親は仕事でほとんど家にいない。たまに祖父母の家に泊まりに行ったりもしたが、母親がいない日はテレビが見放題だった。

夜に母親が帰ってくると、夕飯と風呂を済ませて教団施設へ行く日もあったが、母親が疲れて寝てしまう日も多かった。母親が休みの日は昼に起きて昼食を食べ、その後は教団施設で過ごした。

母親は年末年始、GW、お盆は毎回、「帰省のため」「家族旅行のため」と職場には嘘をついて長期休暇を取り、3日〜1週間ほどの教団の集中セミナーに参加した。

母親はセミナー帰りに必ず職場へのお土産を買ったが、時任さん姉妹は、旅行に連れて行ってもらったこともなければ、そのお土産すら食べさせてもらえなかった。

年末年始は父親が店を閉めていたので、母親は娘たちを父親に頼んでセミナーに出かけた。時任さん姉妹が幼い頃は、普段一緒に過ごすことの少ない父親には甘えられず、父親と過ごすことに慣れない2人は、母親不在中に「お母さんに会いたい」と泣いたこともあった。

年越しは父親の店で他のお客さんと共に過ごし、そのまま初詣へ。元旦は先に父方の実家にあいさつに行き、その後、母方の実家の集まりに参加。時任さんはこの年末年始の過ごし方が好きだったため、母親に誘われてもセミナーには行かなかった。親戚は皆、母親が教団セミナーに行っていることを知っていたが、母親のことを話題にすることはタブーになっていた。

父親の店が休みでないGWなどは、時任さん姉妹は母親についてセミナーに参加したり、子供がいる信者の家に預けられたりした。

時任さんたちは、母親のそばで過ごせるのはうれしかったが、セミナーでは基本的に食事は1日1回、睡眠時間も1日4時間と、子供が参加するには厳しいもの。参加している大人たちは自分と戦っているので、子供のことなど気にかけていない。母親のセミナー参加は、時任さんたちが小学生の間、ずっと続いたが、子供にとってとても退屈なものだった。

しかし小学校高学年くらいには、子供を対象にした「子供セミナー」ができた。

子供セミナーの食事は1日2回、睡眠は6時間程度許されていた。時任さん姉妹は、海で遊んだり花火をしたりなど、家族とはできなかった小学生の夏休みらしいことを満喫。

線香花火
写真=iStock.com/Johan Aryanto
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ただ、泊まりがけの教団イベントが、小学校の遠足とかぶったときなどは、母親に「行きたくない」と言っても聞いてもらえず、遠足を休まされたことはつらかった。