信仰を隠す生活

小学校の授業後は、母親は仕事で不在だが、友達たちが時任さんの家に集まって遊ぶようになった。

仕事が忙しく、片付けが苦手は母親は、家の中はいつもぐちゃぐちゃ。しかも家の中には教祖の写真や教団の本、説法のテープなどが散らばっている。絶対に教団のことを友達に知られたくなかった時任さん姉妹は、遊びに来た友達たちに見つからないように必死だった。

「その頃の教団は社会的に叩かれていて、連日ニュースに取り上げられている状態だったので、ほとんどの信者が信仰を隠していたと思います。バレてしまうと、仕事を解雇されたり、親から勘当されたり、離婚になったりと、多方面で影響が出ていました」

一緒に下校した友達は、一度家にランドセルを置きに帰った後、すぐさまやって来る。隠す物が多い上、時間もないので隠しきれていない場合も多々あり、教祖の写真を見つけた友達は、「これ誰?」と聞いてきたが、「親戚のおじさん」と慌てて嘘をついた。

古びたカセットテープと壊れたウォークマン
写真=iStock.com/Shaiith
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「母のたまの休みにも、構わず友達は遊びに来ていましたが、母から文句を言われた記憶はありません。ただ、子供のために自分がやりたいことを諦めることもしない母は、大きな声で教団の本を読み出したり、教祖の説法のテープを流したりし始めるので、友達たちに、『おばちゃんどうしたの⁉』と驚かれ、とっさに『お祈りしてる!』とごまかして、話題を変えようと必死でした」

わが道を行く母親は、娘たちのことには一切無関心。友達たちに話しかけたり、お茶やお菓子を出したりすることはまったくなかった。