子供たちの「野球離れ」が止まらない。産経新聞記者の田中充さんと森田景史さんは「罵声を浴びせる指導や、補欠の文化、お茶当番の負担など、野球の文化が保護者から敬遠されている」という――。(第2回)

※本稿は、田中充、森田景史『スポーツをしない子どもたち』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

グラウンドに並ぶリトルリーグの選手たち
写真=iStock.com/pkripper503
中学校以下は壊滅状態(※写真はイメージです)

野球部員は2割以上も減少

2009年、産経新聞紙上で「日本の野球力」と題した年間企画が掲載された。

北京五輪でメダルにすら届かず、ソフトボールとともに五輪競技からの除外も決まっていた野球だが、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は大いに盛り上がりを見せ、テレビ中継は高視聴率をマークした。

一方で、すでに地上波での巨人戦中継は減少の一途をたどり、名門の社会人チームの休廃部も相次いだ。

「いまの野球界はまだ安泰だけど、将来的にはどうだろう。課題を浮き彫りにした上で対策は必要ではないか」という危機感は担当記者の共通認識だった。

2009年の第2回WBCを見ていた子どもたちはその後、中学、高校、大学あるいは社会に出て働く年代になっている。この間、日本の高校野球はどうなっているのか。日本高野連が公表しているデータ「部員数統計(硬式)」を見てみたい(図表1)

1982年度に11万7246人だった部員は増加傾向を続け、時代が平成になった89年度に初めて14万人を突破する。

しかし、2014年度に17万人を超えたのをピークに、翌年から下降局面に入る。ここからの減少幅はかつてないほどに大きい。18年度15万3184人、19年度14万3867人、そして21年度は13万4282人と、ピーク時と比べると2割以上の減少となった。

加盟校数も1989~2016年度まで4000校を超えていたが、その後は大台を割り込み、2021年は3890校となった。