コロナ禍での外出自粛は子どもの健康にどんな影響を及ぼしているのか。産経新聞記者の田中充さんと森田景史さんは「学齢期を迎える前後は、さまざまな身体運動の基礎を身につける時期。その時期に外遊びを奪われた子どもは、体力テストの数値が低下している」という――。(第1回)

※本稿は、田中充、森田景史『スポーツをしない子どもたち』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

子どもたちの体力が低下した

2011年3月に起こった東日本大震災は、2万人を超える死者・行方不明者を出し、多くの人々から生活基盤を奪った。

当時、学校に通っていた子どもたちは、スポーツや外遊びなどを通じて体を動かす時間を奪われた。

震災から3年後の春。福島県須賀川市の地元スポーツ少年団の指導者はこう危ぶんでいた。

「幼稚園や小学校低学年に、転び方の下手な子どもが増えました」

フォームローラーで遊んでいるうちにマットの上に顔から落ちる子供
写真=iStock.com/JohnAlexandr
転び方の下手な子どもが増えた(※写真はイメージです)

頭から前にのめり、顔や頭にけがをする子どもが増えたという。

学齢期を迎える前後は、さまざまな身体運動の基礎を身につける時期だといわれる。転ぶときに手をつくことで頭部を守ったり、体を回転して受け身を取るなど、大けがを防ぐ動作は外遊びの中で自然と身につけていくものだ。

「大事な時期に外遊びができなくなった影響が、時間差で表れたのではないでしょうか」

先の指導者はそう言って、表情を曇らせていた。

福島の学校では、日常生活にどれほど制約があったのか。

福島県教育委員会が2018年3月に策定した「ふくしまっ子児童期運動指針」に、深刻さを物語るデータが記載されている。

それによると、震災直後の11年6月時点で、県内全小学校の約15%にあたる71校が、屋外での活動を全く行っていなかった。

また、約50%の242校が、屋外活動の一部を制限していたという。

制限は徐々に解除されたものの、一部の制限は14年度まで続いた。