ハードル跳びの動作ができない
2016年度から18年度まで福島県中学校体育連盟(中体連)理事長を務めた長正壮平氏に、震災後の中学生を取り巻くスポーツ環境にあらわれた変化や、ここ数年の中学校体育の現場で何が起こっているか、などについて話を聞いた。
長正氏は中学校の体育教諭としても20年以上の現場教育の実績があり、現在も福島市立北信中学校教諭として体育を教えている。部活動では陸上競技を専門に指導してきた。
「少し前の世代ならできたことが、できなくなっています。体育の授業を見ていると、そういうことがたくさんあることに驚かされます。特に、とっさの判断による巧みな身のこなしができなくなっていますね」
長正氏が「苦労が絶えず、不安を覚える」と打ち明けるのが、ハードルの跳び方を指導する授業だ。
昔の生徒は、跳び方を少し教えると、ハードル跳びの動作を簡単にできた。片方の足を前方に伸ばし、もう一方の足を地面から水平に開き、くの字に曲げて横から抜くという動作だ。
いまの生徒たちは、実例を示してみせても、すぐに真似ができない。曲げた足を抜く動作を理解するのに、時間がかかるそうだ。
しかも、年を追うごとに、教えた動作を実践できない生徒の割合は増えているという。
上体を立てられずにバタッと倒れてしまう
「昔の生徒にもできない子はいたが、ハードルを跳ぶフォームの形で、足を開いて地面に座らせると、少なくとも上体を立てたまま維持することはできていました。いまの子どもは、体幹が弱いのか、股関節が柔らかくないのか、上体を立てられずにバタッと倒れてしまう。そういう子どもたちが年々、増えています」