「野球はこれまで非常に皆さんが注目をしてくれていたが、競技者人口がどんどん減っている。こうした中で、少しでもこのオリンピックが野球に興味を持ったり、始めるきっかけになったりしてくれる大会になってくれればいいと思っている。この24人と日の丸を背負い、ともに東京五輪で戦えることを期待している。この舞台をみたことがきっかけとなって、1人でも多くの子どもがバットやボールを持ってくれれば、これほどうれしいことはない」

「お茶当番や試合の手伝いをさせられる」と保護者が敬遠

野球が子どもから敬遠されるのには、環境の問題も影響している。

強豪チームともなると、選手の保護者が、日々の練習において、監督やコーチに飲み物を差し出す「お茶当番制」があったりする。

しかも、週末には遠征があり、親が付き添って、練習や試合の手伝いをしなければならない。

「将来はプロ野球選手に」という夢があれば別だが、現在は夫婦共働きの家庭が多く、子どもが週末にスポーツするのは大歓迎でも、親の同伴が必須というのはハードルが高いだろう。

小学5年の子どもがサッカーをしているという東京都内のある母親は、「野球はハードルが高いんですよね。送迎が大変だとか、親がお茶当番をやらないといけないとか聞きますからねえ」と語る。

また、この母親は「サッカーはそういうのがないんです」とも話してくれた。

車を運転する人
写真=iStock.com/kazuma seki
親の同伴が必須というのはハードルが高い(※写真はイメージです)

補欠という日本の悪しきスポーツ文化

日本では、他のスポーツをすることを嫌う指導者が多い。そのため、子どもたちは一度始めたスポーツからの“転向”が難しい。

野球もサッカーも同じグラウンドを使うことがあり、バスケットボールも学校内の体育館で練習する。他の競技に移ると、前の競技の指導者と顔を合わせてしまう。

そのため、「野球をやめてサッカーに行きます」と言いづらい面もあった。

しかし、アメリカでは夏は野球、冬はサッカーやアイスホッケー、アメリカンフットボールなどに興じるのが当たり前だ。

そもそも「補欠」という概念も日本の悪しきスポーツ文化だ、という声もある。

米大リーグで活躍した上原浩治氏の長男はアメリカで育っている。

上原氏に聞いた話では、アメリカでは学校が休みになると、子どもは地域のクラブチームでプレーするが、チームは試合に必要な人数以上は合格させないという。

それによって、なるべく全員が試合に出られる仕組みになっているそうだ。