良いことも悪いことも必ず誰かが見ている

世の中は人間がまだ知らない、わからないことだらけです。宇宙や素粒子のことだけではありません。脳や身体の仕組みなど、自分自身についてさえ、ほとんど何もわかっていないのです。

とすれば、この世には人間の理解を超えることわり、秩序があるのかもしれません。人間を超えるもの、神様、サムシング・グレートとはいったい何でしょう。

手のひらを太陽に照らしてみれば
写真=iStock.com/high-number
※写真はイメージです

子どものころ、祖母に言われた言葉。

「どこでもいつでも、お天道様は見てござる。まじめに一生懸命やりなさい」

その「お天道様」でしょうか。

私自身は勝手に「自分以外のすべての人間」だと思ってきました。自分の周りの人間すべてを神様と思えば、良いことも悪いことも誰かが必ず見ています。

誰も見ていないと気が緩み、人間は怠けたり悪いことをしたりします。しかし、自分以外のすべての人間が自分を見ています。誰も見ていないということはありません。

丹羽宇一郎『生き方の哲学』(朝日新聞出版)
丹羽宇一郎『生き方の哲学』(朝日新聞出版)

人知れず懸命に努力する。その姿を誰かが必ず見ています。上司、同僚、部下、取引先、友人、家族、親族、そして路傍の他人……。

だから、悪いことをしてはいけない。ウソをついてはいけない。楽をして、良い目を見ようとしてはいけない。必ずその報いがある、と私は思ってきました。

そして、自分の80年余の人生を顧みると、やっぱりその考えは間違っていませんでした。

「清く、正しく、美しく」生きようとすることの意味は確かにある。

私はそう信じて疑いません。

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