※本稿は、野村竜二『潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた』(鉄人社)の一部を再編集したものです。
バスタ新宿に手配師が現れるという情報の真贋
1日に1500便以上が発着する日本最大のバスターミナル「バスタ新宿」。
新宿駅南口からスグという好立地のおかげで利用者も多く、高速バスを使う人にとっては、なじみ深い場所といえるだろう。
驚くなかれ、そんなバスタ新宿の待合室では、仕事を斡旋する手配師に声をかけられることがあるというのだ。
これまで、高田馬場や横浜寿町など、労働者が集まる場所では手配師の仕事を受けてきたが、バスタにそんな奴いるのかよ、とさすがにツッコミを入れたくなる。
よし、それなら実際に現地へ行って調査してみようじゃないの。はたして本当に手配師はいるのだろうか。いるとすれば、どんな仕事を斡旋されるのか。
まさか高速バスで現場まで移動させれられるなんてことはないだろうけど……。ちょっと緊張してきた。
朝8時、出発ロビーに現れた男の正体
何時に行けば手配師に会えるのかわからないので、ひとまずネットでバスの発着時刻表を確認した。
どうやら午前7時からの1時間が、到着するバスの数が多い時間帯のようだ。
人が多いときに手配師も来るはず、という予想のもと、2月上旬、平日の朝7時にバスタ新宿を訪れることにした。
人が集まっているのは、3階にある観光案内所か、4階の待合室に限られる。おそらく手配師もそのどちらかで声をかけているにちがいない。
よし、まずは3階の観光案内所だ。
しかし、そこにいたのは成田空港からバスでやってきたであろう、外国人旅行者ばかり。一応休憩スペースになっているが、これはダメそうだ。
エスカレータを使って4階へ。一方、こちらは人があふれている。
これから旅行にでも行くのだろうキャリーケースを引くテンションの高い人もいれば、出張にいくのかダルそうなサラリーマン、虚ろな目でベンチに座っている若者は深夜バスで到着したばかりなのだろう。
なかにはベンチの上で大きなイビキをかいている中年のオッサンもいるし。
うむ、ここなら手配師が現れても不思議じゃない。ベンチに腰を下ろして、キョロキョロと周囲を見回す。それっぽい奴はいないだろうか。
数十分経っても声をかけられる気配すらないので、立ちあがって歩いてみる。時刻は朝8時を回ったところだ。
すると、俺の方にスマホ片手の男性が歩いて来た。おおおっ、もしかして手配師だろうか。なにやら話しかけてきたぞ。