子育てに専念するために仕事を辞めると、どんなリスクがあるのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「正社員であれ派遣であれパートであれ、どんなかたちでも仕事を続けたほうがいい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

皿洗いをする主婦
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです
長嶺さん(仮名/53歳)のケース
39歳時点:会社員、年収1000万円
53歳現在:専業主婦、年収0万円
池澤さん(仮名/48歳)のケース
41歳時点:漫画家、年収800万円
48歳現在:漫画家、コンビニエンスストアのアルバイト、年収100万円

年収1000万円を捨て、育児のために退職

高齢出産が増えている昨今。私の周りの働く女性にも、40歳を過ぎてはじめて子供を持った方もいます。晩婚・晩産の方はお子さんへの思いが特に強くなる傾向があるのか、中には「子育てにすべての時間を使いたい」と、仕事を辞めてしまった方もいました。

そこで今回は、仕事を辞めて子育てに専念してきた女性たちを悩ませる「復職問題」についてお伝えします。

大手広告代理店で働いていた長嶺香織さん(仮名/53歳)は、39歳のときに出産。長い不妊治療を経て授かった待望の赤ちゃんだったそうで、思い入れもひとしおだったのでしょう。産休・育休後は復職予定でしたが、「一緒にいられる時間は今しかない!」と、お子さんと過ごす時間を一番にすることを決め、40歳で退職しました。

産休前の年収は1000万に迫るほどの高給取りだった長嶺さん。大手メーカー勤務の夫と都内の高級マンションで暮らす、「東京版SEX AND THE CITY」とでも名付けたくなるようなライフスタイルを送っていました。

夫も高級取りのため、金銭面の不安はなかった

お子さんを持つまでは有休もろくに取らず仕事に邁進していた彼女でしたが、産後は仕事に傾けていた情熱のすべてがお子さんに注がれるように。あれほど好きだった広告の仕事にも未練がなく、何度も前の職場から「フリーランスとして手伝ってほしい」とSOSを受け取っていましたが、完全な専業主婦としてお子さんとの時間を過ごしていました。

それが可能だったのは、彼女の夫も年収1200万円の高給取りだったからです。長嶺さん自身もそれまでバリバリ働いていたので貯金も2000万円ほどあり、金銭面に不安はありませんでした。

そんな彼女と先日、10年ぶりに再会。手塩にかけて育てたお子さんは見事に大学附属の難関校に合格。中学生になった今、子育ては終わりに近づいているようでした。しかし、長嶺さんの顔は晴れません。聞いてみれば、「仕事がない」とポツリ。子育てに区切りがついた彼女は、13年ぶりに仕事を再開しようとしていたのです。