首都圏のマンションが高い。ローンを組む時に気をつけるべきことは何か。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「その時に払えるからと言って、安易に購入してはいけない。収入減少の想定もして返済シミュレーションをしたほうがいい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

東京のビジネスマン
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35歳で6200万円のマンションを購入

山形さん(仮名/35歳→45歳)のケース
本人 会社員(年収800万円)※当時の年収も800万円
妻 専業主婦
子供 小学生
住まい マンション(住宅ローン月16万5000円)

年収800万円、月約50万円の手取りがある大手メーカー勤務の40代男性。10年前には都内の一等地にマンションを購入し、家族で楽しくお過ごし……かと思いきや、自分のお小遣いは3万円で、家計は火の車だと言います。高給取り一家の「誤算」とは一体……?

私がはじめて山形弘樹さん(仮名)にお会いしたのは今から10年前のこと。当時35歳だった彼は同級生の妻とともにお子さんの将来を考え、教育環境の整った都内の築浅マンションを買おうとしていました。

金額は当時で6200万円。ご両親からの600万円を頭金に、5600万円を35年ローンで組もうという計画でした。親の援助によって500万円あった貯金には手を出さずに済みましたが、それでも月々の支払いは修繕積立金などを含めて16万5000円。手取り50万円の山形さんの場合、収入に占めるローンの割合は33%になります。

本来であれば、住居費は手取りの25%以内、不動産価格の高い都内の場合、許容範囲を広くしても30%以内に収めるのが理想的ですが、山形さんの教育環境への強いこだわりから、私の懸念をお伝えしながらも、教育環境が充実していることで知られる地域のマンションを購入したのでした。

給料は横ばいなのに、子供の教育費が月15万円に

そして月日は流れて10年後の2022年。山形家の家計は毎月、赤字になっていました。彼の給料は10年間ほぼ横ばいで変わっていないにもかかわらず、なぜここまでひっ迫してしまったのか。理由を聞けば、10歳になったお子さんの教育費がその原因だったのです。

現在小学4年生のお子さんは都内屈指の超有名進学塾に通いだしたばかりで、中学受験戦争に足を踏み入れたところ。塾代だけなら3、4万円で済むのですが、進学塾での勉強をサポートするための個別指導や家庭教師代が10万円かかるといいます。さらに習い事も入れると、毎月15万円の教育費が山形家に大きくのしかかっていました。

住居費と教育費ですでに30万円オーバーですので、手取り50万円の高給取りでも生活はカツカツ。当時500万円あった貯金もほとんど増えておらず、むしろこのままでは切り崩しが続いて危険水域に陥る可能性が高いことから、私のもとに来てくれたのでした。

教育費に月15万円と聞くと驚かれるかもしれませんが、この地区では20万円もザラ。山形さんの暮らす地域はお受験激戦区で、私自身もその壮絶な話を人づてに聞いたことがあるほどです。また、無事に中学に合格できたとしても山形さんの場合は大学まで私立校をご希望だったため、劇的に教育費が下がることはありません。今後10年以上、最低でも月10万円の出費が続きます。