ボーナス込みで年収1200万円超でも老後はピンチのワケ
最近、定年退職後に収入が減ることを見越し、給料・退職金・企業年金・iDeCoなどをどのようなタイミングで受け取るとよいのか、という相談を受けることが増えました。
受け取り方を考えることは非常に大切なことです。ただ、受け取り方にこだわりが強すぎたり、受け取れる金額に期待しすぎたりするケースが目立ちます。本人の考え通りに実行すると、かえって老後の暮らしが脅かされるのではないかと思える事例も少なくありません。
半年以上前に「今のままでは生活費が足りない」と相談に来た、都内のタワーマンションに住む会社員・浜田透さん(仮名・59歳)も、退職金、企業年金などの受け取り方を悩んでいました。60歳になり、再雇用で働くことになると、手取り収入は今の6割ほどに減る見込み。生活レベルを維持していくには、どのように受け取るとよいのかという相談でした。
相談時点での手取り収入は、約66万円。専業主婦の妻(57)とひきこもりがちの一人娘(28)との3人暮らしにかかる支出は、住宅ローン返済の21万円を含めて月に約66万円。毎月、収支トントンの状況で、赤字になる月もあるといいます。ボーナスもけっこうな金額(年200万円)をもらっていますが、気が付くとなくなっているそうです。
60歳になると、給与は6割ほどに下がり、手取りは約39万円になる見込み。60歳以降、企業で働いた賃金が以前の75%未満になる場合に最大で賃金の15%分が支給される国の制度「高年齢継続雇用給付金」がありますが、あいにく60歳以降の給与が35万7864円以上の場合は対象外です。浜田さん宅の貯金額200万円。そのため、生活を維持するために、一時金で受け取る1000万円ほどの退職金を切り崩すか、もしくは、約2800万円になっている企業年金を60歳から20年間、月に12万円ほどの年金として受給すべきか迷っているのです。
60歳以降、月66万円の生活費をペイするには月収39万円では、27万円が不足します。何かしらで上乗せしなくてはなりません。65歳まで働けますが、その後は年金暮らしとなります。会社では、70歳までの雇用機会の確保として、65歳以降はパート雇用などを可能にする方向で検討を進めているようですが、確定していません。働けたとしても、さらに収入が下がるのは必至です。
つまり、65歳以降は夫婦で受けとる公的年金月約25万円が収入の軸になり、そこから住宅ローン完済予定の75歳までは、41万円ほどを補塡しないと家計は回らないことになります。