2022年6月、東京国税局鶴見税務署の職員(24)、元大手証券会社社員(27)らが国の「持続化給付金」をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕された。現役職員が不正受給に加担するという衝撃的なニュースについて、元国税職員・小林義崇さんが知られざる若手国税職員の金銭事情とともに、事件の背景 に踏み込む――。

現役国税職員が逮捕の衝撃

6月2日、元東京国税局職員の筆者にとって、非常にショッキングなニュースが目に飛び込んできた。国から支給される「持続化給付金」をだまし取ったとして、東京国税局鶴見税務署に勤める現役職員を含む仮想通貨投資グループに関係する20代の男女7人が逮捕されたのだ(主犯格の30代の男は、ドバイに逃亡中)。

このグループは、主にLINEのグループチャットで10~20代の高校生や大学生などに対して給付金を暗号資産に投資すると持ちかけたうえ「投資家なら個人事業主になるので、給付金を申請できる。投資すれば元金が2倍になる」「コロナ対策の持続化給付金がもらえる」などと虚偽の説明をし、不正受給をさせた疑いを持たれている。被害総額は2億円を超える見込みだ。

持続化給付金とは、新型コロナウイルス感染症の経済対策として臨時的に導入された給付金である。売り上げが前年同月比50%以上減少している個人事業主に最大100万円、法人に最大200万円が支給された。

事業者をスピーディーに救済することを目的に、持続化給付金の手続きは他の事業者支援制度よりも簡素化されていた。身分証や売上台帳の写し、確定申告書の控えなどを用意してネットで申請し、書類審査で問題がなければ給付金が支払われたのだ。

そうして売り上げが落ち込んでいた多くの事業者が救済された一方で、不正受給の問題が起きてしまった。中小企業庁によると、すでに不正受給と認定した総額は12億円を超え、不正申請者による自主返還は約166億円に上ったという。

持続化給付金の不正受給はたびたびニュースになってきたが、今回は現役国税職員が逮捕されたことで、さらにセンセーショナルに報道されていると感じる。現在の状況は、日々真面目に仕事をしている国税職員にとっては迷惑以外の何ものでもないだろう。

しかし、元国税職員として今回の事件の背景を考えると、少し複雑な気持ちになる。この事件は決して許されるものではないが、起こるべくして起こったものだと思うからだ。