金銭がらみの不祥事が相次ぐ国税
私は以前から、今回のような事件は起きると考えていた。その理由は大きく2つある。
1つめの理由は、税務の基礎知識がある者であれば、持続化給付金の必要書類を簡単に用意できたという点だ。知識の差だけで考えれば、一般の人よりも税務職員のほうが不正受給を起こしやすい状況にあったといえる。
2つめの理由は、近年報道された国税関係の不祥事を受けてのものだ。以下のとおり金銭がらみのものが目立つのだ。実は今回の事件と同様の持続化給付金関連の詐欺事件も2020年に発生している。
2020年12月:山梨県内の税務署に勤める20代の職員が、国の持続化給付金の詐欺容疑で逮捕され、懲戒免職処分
2021年11月:群馬県内の税務署に勤める50代の職員が、扶養手当の不正受給をしたとして停職処分(同日付で退職)
2021年7月:京都府内の税務署に勤める50代の職員が、勤務時間中に株取引をしていたとして停職処分(同日付で退職)
2022年1月:東京都内の税務署に勤める20代の職員が、兼業許可を得ずに風俗店で働いていたとして停職処分(同日付で退職)
人事院の公開情報によると、国税庁の懲戒処分件数はトップクラスだ。2019(平成31)年は全省庁中トップ(法務省と同数)、2020(令和2)年および2021(令和3)年は法務省に次ぐ2位となっている。これらの懲戒処分のなかには、酒気帯び運転や暴力事件などもあるが、報道を見るとやはり金銭がらみのものが目立つ印象を拭えない。
一般の人からすると、安定した給料がもらえる公務員がこのような行為に走ってしまうことを理解できないかもしれない。しかし、かつて組織の中にいた私の考えは少し違う。公務員だからこそ、危険な儲け話に手を出しやすい事情があるのだ。