ファンド傘下で経営再建中のパイオニアが、意欲的な新商品を出した。3月2日発売の「NP1」は、音声だけで操作できる新デバイスで、いわば“画面のないカーナビ”だ。さらにドライブレコーダーや車載Wi-Fiとしても機能するという。どれだけの商品力があるのか。ジャーナリストの安井孝之さんが取材した――。
画面のないカーナビ「NP1」。バックミラーのわきにある
撮影=プレジデントオンライン編集部
画面のないカーナビ「NP1」。バックミラーの脇にある筐体はドライブレコーダーのようだ。

音声だけで目的地まで連れて行ってくれる

「NP1、東京ドーム付近のガソリンスタンドを探して!」

パイオニア本社がある東京・本駒込でNP1に語りかけた。2秒ほどするとNP1が答えてくれた。

「東京ドームから直線距離で近い順に3件あります。イチ、400mのところに昭和シェル、ニ、600mのところにエネオス、サン、800mのところに別のエネオス。何番に行きますか?」

「1番!」と答えると、「目的地まで約3キロ、所要時間は10分です。まず道路に出てください。そこから案内を開始します」と案内が始まった。

その後は「二つ目の信号を左です。左の車線に移ってください」と指示し、信号を一つ過ぎると「次の信号を左です」、信号が間近になると「この信号を左です。左車線を進んでください」と教えてくれる。音声だけで目的地まで連れて行ってくれるのだ。

道すがらコンビニでお茶が買いたいなら「NP1、駐車場付きのコンビニを探して!」と伝えると、NP1は「考え中」と少し考える。3秒ほどして「3件あります。イチ、100m先にファミリーマート、ニ、300m先にセブン‐イレブン、サン、500m先にファミリーマート。何番に行きますか?」と答えてくれた。これには驚いた。

スマホで現在地を確認しなくても平気だった

まるで地図を見ながら行先を教えてくれる気の利いた同乗者のようだ。従来型のカーナビなら途中でクルマを止めて画面にタッチしてコンビニを探さなければならない。そんな面倒さはない。

画面を見て確認したい人のために自分のスマホをNP1と連携させれば、スマホの画面で現在地を確認できるが、ほとんど画面を見ることはなかった。

しかもNP1は縦横が約12cm、厚さ4cm足らずのコンパクトな筐体きょうたい。マイクとスピーカー、前後にカメラが付いている。フロントガラスの上部に後付けして使える手軽さだ。コンパクトな本体の中には従来のカーナビよりも高度なマイクロプロセッサーが組み込まれているという。

画面のないカーナビと呼ばれるパイオニアの「NP1」
写真提供=パイオニア
画面のないカーナビと呼ばれるパイオニアの「NP1」。