(2)基本を守り手抜きをするな
10年、15年と営業職としての経験を積んでくると、人間どうしても手抜きを覚える。最低限の準備をすれば大きな事故にならないし、ちょっとしたミスならその場でうまく対処して事なきを得るのは簡単だ。また、年数を積めば積むほど「しゃかりきになって頑張る」ということに抵抗感もでてくる。「全力を尽くさずとも涼しい顔して目標を達成するのがベテラン営業マンである」と自分勝手な理想像をつくりあげてしまう人も多い。しかし、長くトップ営業マンを続けている人は、そういう手抜き人間にならないように、あえて自分に大きな負荷を課している。
「それは自分の意志を鍛えるためです。意志を鍛えるという行為に卒業はないし、むしろまわりからの叱咤や指導が少なくなってくるベテランだからこそ、自らそれを課さなければなりません」
コンサルティング会社で50歳を過ぎてもなおエグゼクティブ営業マンとして活躍するB氏はそう断言する。彼は、どんなに業績が好調なときでも「毎週新規アポイントを3件入れる」「毎日雑誌や新聞を2時間読む」「毎週キーパーソンに一人連絡をとる」などのルーティンの業務目標をもち、それを遂行する時間帯も決めて確実に実践している。決めたことを決めたとおりにやることで意志は鍛えられると言う。
「30代の頃までは、大きな案件を受注するためのプレゼンテーションまでこぎつけると、ほかの予定はすべてキャンセルしてそこに集中して取り組みました。しかし、どんなに大きな案件で、どんなにその確度が高くても、未来のための種まきを怠ってはいけません。そうでなくても何かと理由をつけて後回しにしがちな新規のアポイントや情報のインプットこそ、何があっても意志の力で必ず計画どおりやりきることが重要です。だから営業には意志の力が大切なのです」