「営業マンとしての経験を重ねれば、当然ながら誰もが体験談は増えていきます。しかし、自分の商談を成立させたいからとか、少しでも自分に有利な条件を引き寄せたいから等の操作主義は一切排除しなければなりません。重要なのは本当に顧客のことを思って語ることです。たとえば要職の候補者を探す企業は、高い実績をもつ完成された人材を求める傾向にありますが、数年かけて育てる前提で採用したほうがよい場合もありますので、そのような事例も必要に応じ紹介するようにしています。このとき『そもそも幹部候補生はどう育成すべきか』等のプラスαの知恵が提供できれば営業マンとしての価値は高まります。ただし、これによって企業が『もう一度じっくり検討したい』など、短期的には成約を逃してしまうこともありますが」

川北義則さんの著書『男の品格』(PHP研究所)によると「40歳を過ぎてからは損な役回りを自ら受けられるかどうかで、人間としての質や成熟度がはかれる」という。そしてそれが人生で成功するかどうかの分かれ道にもなると言う。

これはまさに40代からの営業マンが真のトップ営業へと成長していくためにも必要な考え方ではないだろうか。

「損な役回りを引き受ける」とは、営業でいえば売り上げにつながらなくても顧客のために何かをやることも含まれる。少なくとも目先の利益のために応酬話法のスキルを磨くことではないだろう。「自分という人間は何者で、なぜ今こうしてこの営業をしているのか」という問いに、まずは真正面から向き合う必要がある。