菅内閣のコロナ対応を皮肉る「たぶん良くなるだろうはダメ」

次の自民党総裁を争う政局は菅義偉首相が不出馬を表明し、新しい局面に入った。次期首相候補として急浮上しているのは岸田文雄前政調会長だ。この政局では、菅氏の不人気とは対照的に岸田氏の人気が高まりつつある。

自民党総裁選(17日告示、29日投開票)に出馬する意向を表明した岸田文雄前政調会長は9月2日、新型コロナウイルス対策に絞った公約を発表した。政府の感染症対応を一元的に担う「健康危機管理庁(仮称)」の新設が柱。公衆衛生危機に対する「先手先手」の対応を強調した
写真=時事通信フォト
自民党総裁選に出馬する意向を表明した岸田文雄前政調会長。9月2日の会見では、新型コロナウイルス対策に絞った公約を発表。政府の感染症対応を一元的に担う「健康危機管理庁(仮称)」の新設を掲げ、「先手先手」の対応を強調した。

しかし岸田氏は長い間、毛並みはいいが優柔不断で、「首相の器ではない」という評価が定着していた人物だ。岸田氏は、本当に変わったのだろうか。

「『たぶん良くなるだろう』ではなく、最悪の事態を想定し、先手先手で徹底した対応をとる」

総裁選への出馬を表明している岸田氏は2日、国会内で記者会見を開き、新型コロナウイルス対策についての政策を発表した。「たぶん良くなるだろう」は菅内閣のコロナ対応を暗に皮肉っている。菅氏は8月25日の記者会見で「明かりははっきりと見え始めている」と発言。あまりに楽観的過ぎると批判を受けた。その菅氏との違いを見せるように「先手先手」を強調したのだ。

「明かりが見えている」発言で、国民は失望していた

8月26日に出馬表明して以来、岸田氏は徹底して菅氏の「逆」を狙っている。会見等では、あえてメモを見ず、カメラや記者の目を見て語りかける。話す内容にも、自分の思いを強くにじませている。官僚が書いた文章を繰り返し読み「自分が何をやりたいのか分からない」という批判を受ける菅氏を「反面教師」として、自らを振り付けている。

菅氏のコロナ対策や、総裁選再選戦略が迷走したことは、2日に配信した「『9月解散は安倍氏からダメ出し』総裁選の先送りを封じられた菅首相はこのまま負けるのか」で紹介した通りだ。結果として3日、総裁選不出馬を表明。「不戦敗」が決まった。6日に行おうとしていた自民党役員人事が滞っていたのが直接の原因だった。

菅氏が沈没していくのと反比例するように岸田氏は存在感を増している。「明かりが見えている」発言で国民を失望させた翌日に出馬表明して違いを際立たせることができたのが良かったのかもしれない。