自民党の支持が飛躍的に伸び、野党は停滞している

自民党総裁の座をめぐり連日サプライズが続く自民党劇場。その中で立憲民主党ら野党は、すっかり霞んでしまっている。1週間前には政権交代を目指して鼻息が荒かったのだが、随分雰囲気は変わってしまった。背景には、テレビを中心としたメディアの報道が、総裁選一色になっていることが原因でもある。

閣議に臨む菅義偉首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相=2021年9月7日午前、首相官邸 
画像=時事通信フォト
閣議に臨む菅義偉首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相=2021年9月7日午前、首相官邸 

9月5日夜から6日にかけて、マスコミ各社は菅義偉首相の辞任表明を受けて行った緊急世論調査結果を発表した。共同通信社の調査では、次の首相に「誰がふさわしいか」の設問で、河野太郎行革担当相が31.9%で1位、石破茂元幹事長が26.6%で2位、岸田文雄前政調会長が18.8%。他のメディアも、概ね同様の傾向が出ており、テレビ番組ではそのデータをもとに政治記者や評論家が29日に行われる総裁選の行方を語り合っている。

一連の世論調査では、ほとんど報道されないものの「次の首相」に勝るとも劣らない衝撃的なデータが出ていた。それは政党支持率だ。共同通信社のデータでは自民党支持率は46.0%で前月よりも6.5ポイント増えた。立憲民主党は12.3%で、前月比0.7ポイント微増。他の政党は低調だった。自民党の支持が飛躍的に伸び、野党は停滞しているのだ。

「河野首相なら自民300議席」のささやきも漏れる

「やはり、自民党総裁選に話題を取られて埋没してしまった」

野党各党からは、ため息が漏れる。

立憲民主党は衆院選に向けたポスターのコピーを「変えよう。」と、政権交代を強く意識した内容にした。枝野幸男代表は1日の段階ではメディアの取材に「単独過半数を目指す」と語っている。菅氏が総裁選不出馬を表明した2日前の話だ。自民党が最も迷走していた次期で、立民の「単独過半数」は難しいとしても、相当議席を増やすとの見方が有力だった。

状況は一変した。菅氏が3日、次の総裁選への不出馬を表明すると、メディアは新型コロナウイルスや、東京パラリンピックのニュースを脇に追いやり、自民党報道一色となっている。結果として野党は忘れ去られた存在になってしまっている。立憲民主党内では「最悪の展開。今のままなら自民党の圧勝を許すことになる」という危機感が漏れてくる。

実際、報道各社の中では「国民、特に若者から人気がある河野氏が首相になれば自民党は衆院選で300議席取るのでは」という見方さえ出ている。