自民党総裁選は9月29日に投開票が行われ、岸田文雄前政調会長が河野太郎行革担当相との決選投票を制して新総裁に選ばれた。岸田氏は第100代首相となる。国民や党員を対象とする調査では河野氏が圧倒的な人気を誇ってきたが、自民党は国会議員中心の決選では、それとは違う結論を選んだ。なぜそうなったのか――。
河野氏があえて「国民の審判」と語った理由
29日午前。決戦の日を迎えた各候補の発言や表情からも、結果はある程度予測できた。
午前11時過ぎ、東京赤坂の議員宿舎でマスコミの取材を受けた岸田氏は「勝利を確信している」とゆっくり語った。ダークスーツに青のネクタイ。8月の出馬表明の時と同じ服装を選んだのは、総裁選の運動が順調に完了した満足感があったからだ。
一方、河野氏は、記者団に「あとは国民の皆さまの審判を受けるだけです」と語った。党所属国会議員と、党員・党友のみで決める総裁選を前にあえて「国民」という言葉を使ったのは、国民の支持が圧倒的に高い自身こそ総裁にふさわしいということを、党所属国会議員あてに訴えたのだ。
午後1時から両院議員総会で投票が行われるのを前に、各都道府県から党員票の開票結果が伝わってきた。予想通り、河野氏が多くの県で1位を獲得したが、岸田氏も自身の地元である広島だけでなく、香川、山形、山梨、島根など8県で1位に立った。「できれば5割以上。最悪でも岸田、高市の両氏の足した数を上回る党員票を獲得する」としていた河野陣営だったが、得票率は40%台にとどまり目標には届かなかった。
議員票では河野氏を大きくリードしている自信を持つ岸田氏は、この段階で勝利を確信していた。おおかたの予想では1回目の投票では党員投票の「貯金」で河野氏が1位になるとみられていたが、1票差ながら岸田氏が1位に。決選投票では岸田氏が257票、河野氏が170票。大差で岸田新総裁の誕生が決まった。