「人はかなり集まったが、熱狂がなかった」
衆院解散から投票日まで17日間という超短期決戦となった衆院選は10月31日、投票日を迎える。「コロナ禍」「岸田文雄首相が就任直後」と話題性は十分あるはずだが、今ひとつ盛り上がりに欠けるというのが実情だ。この「低温」の選挙戦に突入した結果、当初の期待に反して自民党が伸び悩んでいる。
「山口県は信任をいただき、静岡県は残念な結果となった。さまざまな積み重ねでこの結果になった。しっかり分析し、気持ちを引き締めて衆院選に向けて努力を続けていきたい」
25日朝、記者団の前に立った岸田氏は淡々とした表情で語った。文節ごとに言葉を切るような語り口はいつもと変わらないが、普段と比べて少し憔悴しているようにも見えた。
岸田内閣発足後初の国政選挙で、1週間後の衆院総選挙の前哨戦でもあった参院静岡、山口の2補選。与野党どちらにとっても重要な選挙ではあったが、2補選とも自民党議員の辞職を受けて行われただけに、特に自民党にとっては負けられない選挙だった。山口で勝ち、静岡で負けた。1勝1敗は、事実上、自民党の敗北である。
しかも岸田氏は選挙期間中に2度も静岡県入りしている。総裁自らがてこ入れして敗れたダメージは大きい。現地を取材したジャーナリストは「人はかなり集まったが、熱狂がなかった」と岸田氏の静岡入りを振り返る。
接戦というが、実質的には惨敗ではないか
24日深夜にもつれ込んだ静岡補選の結果を分析すると、自民党にとって厳しいデータが並ぶ。
立憲民主党、国民民主党が推薦する無所属の山崎真之輔は65万789票。自民党の若林洋平氏は60万万2780票。接戦ではあったが最終的には5万票近い差がついた。
そして、忘れてはならないのは、静岡補選では野党共闘が実現せず共産党の鈴木千佳氏が出馬したことだ。鈴木氏は11万6554票を獲得した。山崎氏の票と鈴木氏の票を足すと77万票近く。野党共闘が実現していれば、野党側は「圧勝」だった計算になる。
衆院選では200を超える小選挙区で野党共闘が実現、「統一候補」が出馬している。静岡の結果は、野党共闘によって自民党候補が苦杯をなめるシナリオが現実味を増す。
報道各社が行った当日出口調査でも深刻な数字が並ぶ。立憲民主党支持層は93%が山崎氏に投票したのに対し、若林氏は、自民党支持層の79%しか固められていなかった。無党派層のうち69%は山崎氏に投票している。