安倍、麻生、二階の3人は菅首相の再選を支持
新型コロナウイルスの感染爆発と医療崩壊が続くさなかに、自民党は9月17日告示——29日投開票の日程で総裁選を行うことを決めた。
菅義偉首相(自民党総裁)は、無為無策のコロナ対策に批判が殺到して内閣支持率が続落し、衆参補選や複数の知事選に続いて地元・横浜市長選で惨敗してもなお、総裁選で再選を果たして政権を続行する意欲満々だ。
10月21日に衆議議員の任期満了が迫り、総裁選直後には衆院選挙が待っている。自民党議員には「菅首相では選挙に負ける」との危機感が広がり、首相交代を求める声が広がる。自民党が実施した情勢調査でも、このまま衆院選挙に突入すれば自民党は40議席以上を減らして単独過半数を割る恐れがあるとの結果が出た。
ところが、マスコミ各社は菅首相が総裁選に勝利する可能性が高いと報じている。自民党は衆院選挙で大幅に議席を減らすことを承知の上で菅首相を再選しようとしているのだ。これはいったいなぜなのか。
こたえは簡単である。自民党の牛耳る3人の長老――安倍晋三前首相、麻生太郎副総理、二階俊博幹事長――が菅首相の再選を支持しているからだ。
「世代交代を阻む」という一点で手を握り合っている
安倍氏66歳、麻生氏80歳、二階氏82歳、菅氏72歳。2012年末から7年8カ月に及ぶ日本史上最長となった安倍政権と昨年秋にそれを受け継いだ菅政権では、長老3人と菅首相が国家権力を完全支配し、時に「内輪もめ」しながらも「世代交代を阻む」という一点で手を握り合い、あらゆる利権を独占してきたのだった。
今の自民党議員の大半は、この4人のうちの誰かの庇護の下にあり、彼らが密室の談合で決めたことに黙って従う体質が身に染み付いてしまった。
落選の危機に直面した今でさえ、菅首相再選で歩調をあわせる長老たちに逆らい新しいリーダーを担ぐエネルギーが生まれてこない――これが長期政権のぬるま湯に浸かってきた自民党議員たちの実像である。非力な野党を相手に過去6回の国政選挙で楽勝を重ねた結果、危機に立ち向かうエネルギーを失ってしまったのだ。