菅首相は「桜を見る会」捜査が終結するまでの“中継ぎ”

菅首相再選を支持する代わりに二階幹事長の交代を迫る——安倍氏の基本戦略は決まった。安倍氏は「ポスト菅」を問う世論調査で、石破氏、河野氏、小泉進次郎氏に続いている。岸田氏や立憲民主党の枝野幸男代表より上だ。不人気の菅政権がダラダラ続く方が安倍政権復活の芽は残る。

最大の障壁は「桜を見る会」疑惑だ。東京地検特捜部は不起訴としたが、検察審査会が7月30日に「不起訴不当」の判断を示し、特捜部は再捜査して起訴するかどうかを改めて判断することになった。

安倍氏の幸運は「不起訴不当」にとどまったことだ。「起訴相当」なら特捜部が再び不起訴にしても検察審査会の再審査で「起訴相当」になれば強制起訴される。「不起訴不当」の場合は特捜部が次に不起訴と判断すれば捜査は終結する。特捜部は年内にも判断を下すとみられ、そこで不起訴となれば、安倍氏は晴れて「潔白」を宣言し、堂々と首相返り咲きに向けて動き出すことができるのだ。

年内は不人気の菅首相に「中継ぎ」させればいい。秋の衆院選挙で自民党が議席を減らしても自公で過半数を割り野党に転落するほど負けはしないだろう。議席減の責任を二階氏に押し付けて幹事長を交代させることができれば最高だ——安倍氏の当面の基本戦略は「菅支持+二階外し」である。

麻生氏…河野氏に出馬の口実を与えたくない

次に安倍氏の盟友である麻生氏の本音を探ってみよう。

麻生太郎財務大臣
2014年7月14日撮影。麻生太郎財務大臣(写真=Ogiyoshisan/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

麻生氏は、安倍氏が率いる最大派閥(96人)と自ら率いる第2派閥・麻生派(53人)が首相を交互に輩出し、安倍氏と麻生氏がキングメーカーとして君臨する将来像を描いてきた。そのために第5派閥の岸田派(46人)を麻生派に吸収し、「安倍派」と「麻生派」が数の上で並び立つことを目指す考えを周辺に示してきた。

目障りなのが、麻生派に所属する河野氏だ。河野氏が国民的人気を背景に首相になれば派閥内の世代交代が一挙に進み、自らはキングメーカーどころか「過去の人」になる。麻生氏が昨年秋の総裁選でも河野氏の出馬に反対し、今回も反対の姿勢を崩していないといわれるゆえんだ。

河野氏は菅内閣の閣僚である。菅首相が出馬する以上、閣僚として支えてきた河野氏の出馬は難しい。衆院選挙さえ終われば「選挙の顔」としての河野氏待望論も収まるだろう。それまでは菅首相に続投してもらうしかない。

麻生氏も本音では岸田氏が首相になるのがいちばん都合がよい。独自行動が目立つ河野氏と対照的に、岸田氏は従順で操りやすい。首相になっても安倍氏や麻生氏に依存するのは間違いない。だが、岸田氏が勝勢になって菅首相が不出馬に追い込まれ、河野氏に出馬の口実を与えることは絶対に避けたいのだ。