マスコミは一変して「岸田推し」になったが…

新聞、テレビ各社の論調が激変している。自民党寄りの立場を取る読売新聞なども含め、菅氏には厳しく、岸田氏を持ち上げるような論調が目立つ。菅氏のスポークスマンと揶揄やゆされることもあった政治評論家たちもしかりだ。テレビは、岸田氏の生出演日程を確保するのを競っていて、街頭インタビューでは「人が変わった」「菅氏と違って明るい」などという好意的なコメントを放映している。

新しもの好きで、人気の出てきたものをもてはやすのは、マスコミの常ではある。しかし、マスコミはこれまで一貫して岸田氏が、優柔不断で決断できない政治家だというトーンで否定的に取り上げてきた。

昨年9月、菅氏、岸田氏、石破茂元幹事長が争った党総裁選の際、マスコミは「鉄壁のガースー」と言われた菅氏を持ち上げた一方、「きっしー」で売り出そうとした岸田氏には冷淡だった。

このときの結果は1位が菅氏、2位が岸田氏、3位が石破氏。もし岸田氏が最下位に終わることがあれば、政治生命の危機ともみられていた。石破氏を潰すために、安倍晋三氏や麻生太郎氏が動き、菅氏の支持派閥から岸田氏に票が回されたといわれている。

今の報道ぶりは、そうした過去の経緯を忘れたかのようだ。岸田氏は1年間でそんなに変身したのだろうか。

国会議事堂が端に見える曇天の景色
写真=iStock.com/MasaoTaira
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「岸田ノート」は中曽根氏の二番煎じにすぎない

「変わった」と言われるが、政治生命をかけて総裁選に出馬するための記者会見でメモを見ずに自分の言葉で訴えるのは当然の話。菅氏が例外だっただけの話だ。

首相になる時に備え、いろいろなアイデアや助言をしたためた「岸田ノート」が「いい話」として語られているが、「首相になったらやることを」に大学ノートにまとめていた中曽根康弘氏の二番煎じにすぎない。中曽根氏にあやかってノートを記している政治家は、ごまんといる。

具体的な政策はどうか。コロナ対策では臨時の医療施設の開設などを訴えているが、新味に欠けるというのが実情。「健康危機管理庁(仮称)」の創設は、目新しいが、新組織ができたころには、コロナ禍は収束しているのではないかという突っ込みも出て来るだろう。