「これはいつおさまるか、わからない」

日本国内で新型コロナウイルスの最初の感染が確認されたのは2020年1月である。時間とともに感染は拡大し、4月には緊急事態宣言が出され、外出や移動などの自粛が要請される。

この混乱のなかで5月に入るころ、株式会社デンソーの経営役員の山崎康彦氏は、新経営研会からの依頼への対応を考えていた。山崎氏はデンソーでCMO(Chief Monozukuri Officer)の重責をになう。

デンソーの主力工場のひとつ、ぜんみょう製作所では、新経営研究会からの依頼を受けて見学会をともなう異業種・独自企業研究会の受け入れを、2020年3月に予定していた。2月ごろからの新型コロナ感染拡大を受けて、この見学会は同年の夏に延期することを決めていた。

デンソーの主力工場の一つ、善明製作所の全景
写真提供=デンソー
デンソーの主力工場の一つ、善明製作所の全景

新経営研究会は1982年に創設され、40年近い歴史をもつ技術系経営者層・幹部が集まる研究会である。代表の松尾隆氏のもと、製造企業の経営者層を中心とした会員に、交流や相互啓発の場を提供してきた。見学会の参加予定者には、日本を代表する企業の著名な経営者の名前も混じる。

延期を決めたものの4月に入り、コロナ感染は国内外で拡大し、猛威を振るう。5月に入るころには山崎氏は、「これはいつおさまるか、わからない」と考えるようになっていた。夏の見学会も、再延期になるかもしれないが、先が見えない。ずるずると先延ばしするよりも、オンラインに切り替えてはどうか。