対面でなくても、できることはある

同年4月にはデンソーでも、新入社員研修などはオンラインに切り替わっていた。こうした体験などから山崎氏は、対面でなくてもできることはあると感じていた。

新経営研究会の側も、会員のあいだに、やらない不満を積もらせていくよりも、オンライン見学会という新しい形態を試みてみる意義があると、考え直しはじめていた。山崎氏は新経営研究会に次のような提案を行い、受け入れられた。

・異業種・独自企業研究会の趣旨と長年培ってきた精神をおろそかにしない。
・今回オンライン見学会で使用するビデオは、異業種・独自企業研究会のためにすべて新規に撮影する。
・オンライン見学会でQ&Aを担当する幹部社員は、対象となる生産現場の各箇所に立ち、カメラを持ち込んでダイレクトに質問を受け、実況中継のようにその場で答える。

初めてのオンライン工場見学会

オンラインで行われた善明製作所の異業種・独自企業研究会の見学会は、51名の参加者をえて2020年8月21日に開催された。デンソー側は、オンライン見学でも、従来の見学会と案内する内容は変えないことにした。事前に現場で撮影したオリジナル・ビデオの視聴後に、生産現場からカメラを通じてライブで質問に答えるというかたちで、オンライン見学会は行われた。

日本中、ネットワークでつながるイメージ
写真=iStock.com/metamorworks
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デンソーとしては、ビジネスユースの工場見学をオンラインで受け入れるのは、初めてであり、自信があったわけではない。しかし、早く手を挙げてのトライアルであれば、失敗も許されやすい。チャレンジすれば、オンラインでできることと、できないことの見極めも早く進む。1回楽しんでやってみよう。このように社内で話し合いながら準備を進めての見学会開催だった。

見学会は好評だった。新経営研究会に参加者から寄せられた感想には、「衝撃的な感動」「十分に臨場感があった」「実際に工場を見学しているよう」「リアルな工場見学よりもわかりやすい」「今後のオンラインによる勉強会のお手本になる」等々の称賛の言葉が並ぶ。多くの参加者にとって、期待以上の体験となったことが読みとれる。