テニスの大坂なおみ選手と女優の深田恭子さんが苦しむ「心の不調」
プロテニスプレーヤーの大坂なおみさん(23)が東京オリンピックのテニス日本代表に決まった。
彼女は5月30日に開幕した全仏オープンで精神的負担を理由に1回戦勝利後の会見を拒否して罰金を課せられ、2回戦を前に、長らくうつ病に苦しんでいたことを告白して大会を棄権している。
このうつ病が、彼女の思い込みではなく、本当にその症状があるとすれば、オリンピックに間に合わない公算が大きい。もちろん、全仏1回戦で勝てたように、うつ病でもある程度の活躍はできるかもしれないが、五輪でもメディア取材の殺到は必至であり、精神的な負担も高まる。金メダルとなるとこれが治っていないとかなり困難だろう。
大坂さんとちょうど同じような時期に、女優の深田恭子さん(38)が適応障害という診断を受け、当面の間活動休止することを発表した。
うつ病と適応障害は似た症状もあるが、分類的には異なる病気である。
うつ病は、2週間以上抑うつ気分や不眠、食欲不振などの症状が続く。一方、適応障害は、ある種のストレス状況下でうつ病に似たような症状が出るが、特定の状況でない場面(たとえば家に帰った後)では、おおむね気分よく過ごすことができる。
この2人に関しては、ストレス状況やプレッシャーに起因する心の不調をきたしたのだろう、と私は考えている。
同じ悪条件でも、心が不調になる人と全然平気という人がいる
今、プレッシャーに起因する(=ストレス因子)という言葉を使ったが、「ストレス因子」と「ストレス」は同じものではない。
ストレス因子は心理学の世界では、ストレッサーと呼ばれるもので、人間にストレスを生み出すものであり、ストレスというのは、それによって生じた心のゆがみのことである。
たとえば、ブラック企業のような長時間労働や、口うるさい上司などはストレスではなくストレッサーということになる。
それによって、心が不調になったらストレスということになる。というのは、同じストレッサーのもとでも、心が不調になる人もいれば、全然平気という人もいるからだ。
ただ、ここで誤解されてはいけないのは、同じストレッサーのもとでストレスが生じない人は心が強く、生じる人が弱いというわけではないことだ。
大坂さんの会見拒否についても、当初はプロだから会見するのが当たり前とか、ほかの選手はそれほどのストレスを感じずにやっているではないか、といった意見も少なくなかった。実際、主催者側は罰金を課し、4大大会を通じて追放する可能性にまで言及した。