高齢者への新型コロナワクチン接種が4月12日から開始された。精神科医の和田秀樹氏は「国は、医療現場に即した対応ができていない。医師の接種率が極めて低く、コロナ患者対応の仕事を拒む医療従事者が多いため、患者増加ペースに追いつけない。また、副反応に関する調査分析も甘い。2回接種済の医師の中には38~39度の高熱を出す者が少なくなく、体力の衰えた高齢者の場合、亡くなるケースが出る恐れがある」と警鐘を鳴らす――。
予防接種
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医師のワクチン接種率が低いのに「病床増やせ」と命じる愚

コロナウイルスの感染拡大が全然収まらない。大阪ではここへきて連日感染者が1000人を超えている。

4月5日から5月5日まで大阪市などが「まん延防止重点措置」の適用地域とされ、12日から東京都、京都府、沖縄県の16の市も追加で適用された。さらに愛知、神奈川、埼玉、千葉でも適用が了承された。

そんな中、高齢者へのワクチン接種が4月12日から開始されたわけだが、私は強い違和感を覚えた。

今回の「第4波」の感染拡大で最大の問題となっているのは、コロナ病床の占有率が非常に高いことだ。4月13日時点で沖縄では占有率100%を超え、大阪でも4月1日時点で42.9%だった重症病床の使用率は13日時点で95.1%に上昇した。

「大阪府は医療機関への要請を通じて増床を急いでいるが、医療現場では看護師らの確保は容易ではなく、患者の増加ペースに追いついていない」(毎日新聞4月14日付)

医療機関の中には看護師の応募がゼロだった病院もあるという。要するにスタッフが集められないから、増床がうまくいっていないのだ。コロナ対応の医療スタッフを集めるのに苦戦する最大の要因は、医療従事者へのワクチン接種の遅れがあると私は見ている。

医療スタッフ集めの苦戦要因は、医療従事者へのワクチン接種の遅れ

私が現場の医師や看護師の声を聞くと、コロナ感染を恐れる人が少なくない。コロナが命を奪うような怖い病気と感じている人もいるが(若い世代ではそんなにいない印象)、それ以上に、感染が発覚した際の生活の制限や入院の困難、そして周囲の目やそれにまつわる風評被害的なものを恐れている人は多い。

もちろん、ワクチンを接種することで、重症化が防げたり、感染しにくくなったりすることは理解されており、ワクチン接種を希望しない医療関係者はあまりいない。

おそらくは、医療従事者がワクチン接種を受ければ、コロナ病棟での勤務を拒否する人はかなり減るだろう(多少の割り増し手当があるという条件で)。要するに病床の供給がかなり増え、医療のひっ迫はかなり収まる可能性もある。

ところが、医療従事者へのワクチン接種はまだ全然進んでいないのだ。

「新型コロナウイルスのワクチンの医療従事者などへの接種が始まってまもなく2カ月がたち、東京都内では、1回目の接種を終えた人は対象となる医療従事者などの16%余りです」(NHK「NEWS WEB」4月9日)

現実に私の勤務する川崎市の病院では、発熱外来も設け、コロナ患者に積極的に対応しているが、いまだに医師へのワクチン接種の日程が決まっていない。他の事例は、ワクチンを接種していない医療従事者がワクチンを高齢者に接種するという珍事も発生している。