ドラマ「ドラゴン桜」が好調だ。落ちこぼれ生徒が弁護士から伝授される様々な受験テクニックにより東大合格を目指すストーリー。勉強法や受験関連の著書を数多く出している精神科医の和田秀樹氏は「受験でもビジネスでも難局面を打開するには何か新しいことにチャレンジしないといけない。しかし、高学歴な人や成功体験のある人ほど知識や経験に縛られ新規なことを試すことに否定的だ」と指摘する――。
ドラゴン桜
TBSホームページより

「ドラゴン桜」の見方でバレる「伸びしろ」のある人ない人

ドラマ『ドラゴン桜』(TBS系、日曜夜9時)が始まり高視聴率で推移しているという。放映開始にあたり、私を受験テクニック本のパイオニアと位置づけたメディアから取材依頼が数件あった。

私の長年の受験指導の経験からすると、同番組には納得しかねる受験テクニックも一部含まれているが、このような番組が人気を博することは喜ばしいことだ。

一過性のものかもしれないが、子供や親の勉強意欲が上がるだろうし、東京大学などの難関大学受験を自分と無関係の世界のものと思っていた人が関心を持つことで一定数の子供たちの人生を変えることにもなるからだ。

それ以上に、勉強の成績が思わしくない子供たちが、やり方を変えれば成功できるかもしれないと思い、使えそうなテクニックを試そうとすることに大きな意味があると考えている。「ドラゴン桜」を荒唐無稽な架空の話(ドラマ)だと小バカにする人はそこまでの人だが、逆に、触発されて今とは違うことを試したりチャレンジしたりするきっかけにできる視聴者は伸びしろがある人ではないか。

自分に合った勉強法を模索し「試す」ことが重要

残念ながら、学校や塾で課される宿題には、大学受験の合格のためには役に立たないと思えるものが多く、真面目にやればやるほど非効率極まりない勉強につながる。そもそも、勉強のやり方そのものを教えてくれる学校や塾はほとんどない。

そうした状況が続く中、私が必要だと感じるのは、子供を見守る親の意識改革だ。親自身が、小手先ではない本質的な受験や勉強のテクニックを学ぶ意義を知るとともに、学校や塾に合せるよう子供に強いるのではなく、もっと子供に合った勉強をさせるほうが将来のためになると知ってほしいと思うようになった。

子供の発達には個人差がある。例えば「9歳の壁」があるが、これを超えないと抽象的な思考がうまくできない。それを8歳で超える子もいれば中学生くらいにならないと超えられない子供がいるのは確かだ。

有名中高一貫校に入らないと子供の将来はかなりネガティブなものになると信じている親がいるとしよう。その場合、小4くらいから有名進学塾に通わせるわけだが、その子が「9歳の壁」を超えていないと、算数の文章題も、国語の読解問題もチンプンカンプンになってしまう。その子に無理をさせても発達が追い付かない限りできるようにならないから、無用な劣等感をもったり、勉強嫌いの原因を作ったりしかねない。

ここで親が、わが子に抽象思考の発達が追い付いていないことを素直に認めることができれば(わが子は中学受験には不向きと認識する)、いろいろな対策を試すことができる。