「試す態度の欠如」は政府のコロナ対策にも言える

本稿で、私がテーマにしている「試す態度の欠如」は、教育に限った話ではない。

コロナ騒ぎにしても、バカのひとつ覚えのように自粛という話になり、酒類の提供禁止も含めて、それをさらに厳しくしようという動きが強い。

しかし、最近になって、過度な自粛が高齢者のフレイル状態(虚弱状態といって要介護状態の一歩手前のような筋力低下や知的機能の低下が起こること)を引き起こすリスクが高いことが問題視されるようになった。

コロナの致死率は第1波、第2波、第3波になるにつれ、致死率が低下していて、医療が多少なりと治療法を進歩させていることがわかる。ならば、医療関係者のワクチン接種を急ぐことで受け皿である病床を増やすとか、そのための規制緩和をやるということだって試せるだろう。あるいは、自粛自粛と声高に叫ぶのではなく、国民の免疫機能を高める手立てをする政策を実施するほうが最終的に死亡者を減らすことができるのではないか。試す価値がある施策はたくさんある。

ワクチン
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アベノミクスでも結果的に経済が改善したと言えない段階で、コロナ襲来でダブルパンチになっているわけだが、経済対策として、相続税を大幅に増税して、高齢者に金を使わせるとか、直接税をむしろ増税してその代わり経費を認めるというような景気刺激策だって、試す価値はある。

このような話をすると、コロナの場合と同じように「専門家」と称する学者が試す前から旧来の理論と違うということで言下に否定されることが多いが、試す前から答えが出ていることなど世の中にほとんどないと考えるのがむしろ「科学的」なはずだ。

高学歴な人や、成功体験のある人ほど新規なことを試すことに否定的

せっかくの全面広告が功を奏さず、スタートダッシュとはいかなかった私の新親教育ビジネスだが、試す態度の欠如した親がまだまだ多いことがわかり、さらなる啓もうが必要だと頑張る気にもなった。

子供の成績が振るわないときでも、景気がよくないときでも、ビジネスがうまくいかないときでも、あるいは人間関係がうまくいかないときでも、何かを試さないと局面は打開しないだろう。

高学歴な人や、これまでに成功体験のある人のほうがかえって知識や経験に縛られて、新規なことを試すことに否定的な人が多いという印象がぬぐえない。

根は、頭がいいのだから、これはもったいないことだ。

以前、私がアメリカに留学した際に、精神分析を学びに行ったのに、認知療法や臨床催眠、短期精神療法、集団精神療法、家族療法、さらに当時最先端だった無痙攣電撃療法までさまざまな治療法を学んだ。ひとつの治療でうまくいかないときに、別の治療が試せるのがよい精神科医と考えられているからだ。

知識があるほどいろいろなことが試せるというアメリカのプラグマティズム(実用・実際主義)を垣間見た気がした。

教育であれ、健康法であれ、投資であれ、ダメージを受けない程度に試すことで人生が開けてくるかもしれない。ドラマ『ドラゴン桜』をみて、いろいろと勉強法を試した子供が、将来、試すことに抵抗のない大人になってくれることを心から期待している。

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