ワクチンは免疫力の落ちた高齢者には必要不可欠だ

65歳以上の高齢者への「新型コロナワクチン」の接種が、4月12日から始まる見通しだ。医師や看護師などの医療従事者に次ぐ優先接種である。接種対象の高齢者は6500万人だが、いまのところワクチンの供給量はかなり少なく、高齢者の接種が本格化するのは、早くても5月に入ってからだろう。

新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける女性
写真=AFP/時事通信フォト
新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける女性=2021年3月12日、フランス西部ブレスト

ちなみにワクチンを希望する医療従事者は480万人で、接種は2月17日からスタートし、現在も続けられている。

新型コロナワクチンの効果は大きい。免疫力(抵抗力)が低下して新型コロナ特有のサイレント肺炎や血栓症などで容体が悪化したり、命を落としたりする危険性の高い高齢者にとっては必要不可欠である。高齢者への接種の後には心臓病や血糖障害などの基礎疾患(持病)のある人への接種が続く。できる限り多くの人々が免疫力をつけ、社会全体で流行を防いで感染拡大を収束させたい。

ワクチンは4月5日の週から全国の自治体に配送される。具体的な供給量は、東京、大阪、神奈川の都県にそれぞれ2000人分、残る44道府県には1000人分ずつ配り、その後、量を増やしていく。厚生労働省によると、ワクチンを広く行き渡らせることを優先した結果、少規模でのスタートとなった。今後、供給量が増えるのを待って順次、全国に配送されていく。

「mRNAワクチン」は製造時間が極めて短く、有効性も高い

昨年12月11日付のオンライン(「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない)でも書いたが、新型コロナワクチンの主流は「m(メッセンジャー)RNAワクチン」と呼ばれる遺伝子ワクチン(核酸ワクチン)である。

製造方法が鶏卵などを使う細胞培養に頼る従来のワクチンとは大きく異なり、ウイルスそのものは使わない。人工合成されたRNAの断片をメッセンジャーとして人体に投与してウイルスタンパクの一部(抗原)を体内で作り出し、抗原抗体反応を利用して発症や重症化を予防する。

現時点でアメリカの大手製薬会社ファイザーとドイツの製薬メーカービオンテックが共同で開発したものと、アメリカのバイオテクノロジー企業モデルナが製造したものとがある。

ファイザー社によると、製造の時間が極めて短いうえ、有効性もかなり高い。イスラエルで今年1月17日から3月6日までに同社のmRNAワクチンの2回目の接種を受けてから2週間後の時点での健康状態を非接種者と比較したところ、発症と重症化、死亡を予防する効果が97%にも上り、不顕性感染の無症状感染者になることにも94%の予防効果を示した。