アマゾンなどの動画配信サービスは「新作は無料、旧作は有料」というケースが多い。これはレンタルビデオ店の「新作は割高、旧作は割安」とは正反対だ。なぜこうなっているのか。「Screenless Media Lab.」による新連載「アフター・プラットフォーム」。第1回は「新作無料、旧作有料のビジネスモデル」――。(第1回)
Amazonプライムビデオアプリ
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価格体系がひっくり返っている

1980年代から90年代、ツタヤやゲオといったレンタルビデオ店に行くたびに、レンタル期間の設定が私たちを悩ませた。貸出期間で値段も変わるため、一泊や一週間、あるいは当日にレンタルして急いで作品をみたものだ。また新作は値段も高く、せいぜい一泊しか貸し出しができなかった。

一方、コロナ禍の影響もあって、音楽や動画作品をオンラインで視聴するサービスが普及し、これまで比較的マイナーであった会員制(サブスクリプション)モデルが広く普及した。

このサブスクリプションサービスの注目すべき点は、かつてのレンタル市場で当たり前だった「新作は割高、旧作は割安」という価格体系がひっくり返っていることにある。

例えばアマゾンプライムの会員は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の3作品が無料で見られる。ところが、1990年代に放映されたテレビ版のエヴァンゲリオンを見ようとすると、個別に追加費用を払って購入しなければならない。

より分かりやすい例がWebコミックだ。Webコミックにおいては、最新の連載分だけが無料で見られ、過去の作品を見ようとすると、有料チャンネルへの登録や個別購入等、なんらかの形で対価を払わなければならないことが多い。

逆転現象の理由は明示されていない

かつてのレンタル市場で新作が割高、旧作が割安だったのは、「視聴者にとって価値の高いものは高く、価値の低いものは安く」という、市場原理に従って値付けがされていたからだ。とはいえ、コンテンツの市場価値そのものは、今も当時と大きく変わってはいないはず。では、なぜ市場価値が高いコンテンツが無料で、市場価値の低いものが有料なのか。このコンテンツの「価値と値付けの逆転現象」の理由は、実はあまり明示されていない。

もちろん動画サブスクリプションサービスにも、ネットフリックスのように「契約したらすべて無料」というスタイルもあれば、プライムビデオやApple TVのように、有力なコンテンツは有料で販売し、そのほか会員のみが利用できる無料コンテンツを置くスタイルもある。しかしそのいずれも「新作が高くて旧作が安い」という、利用者からすると飲み込みやすい価格体系は採用していない。