若者に人気のYouTube。それは視覚障害のある若者の間でも同じだ。ある盲学校の生徒たちは「YouTubeでヒカキンの番組をよく見る」という。彼らはどうやって動画を楽しんでいるのか。「Screenless Media Lab.」による連載「アフター・プラットフォーム」。第3回は「スマホの登場がすべてを変えた」――。(第3回)
スマートフォン
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視覚に頼った番組や広告が増えている

インターネットの発達とスマートフォンの普及により、人が日々さらされる情報量は近年、飛躍的に増加し、情報過多の弊害が指摘されるようになった。

2018年にNHK放送文化研究所が実施した「情報とメディア利用」世論調査でも、年代を問わず多くの人が「情報が多すぎる」「情報疲れが起きている」と回答している。

いつ頃からか、テレビには頻繁ひんぱんに字幕が入るようになった。字幕機能の設定にかかわらず、番組中のすべてのコメントが字幕表示される傾向が強まっている。

視覚のみで番組のリズム感を表現するこの手法は、電車内や街頭で音声を伴わずに放映されるデジタルサイネージ広告等が典型だ。ほかにも、移動中などに音を消してスマホ画面を見る習慣が一般化したことで、ネット上の動画CMでも同様の手法が採用されるようになった。

効果音やあおり文句などを動画の中で視覚的に表現し、音声なしでも不足を感じさせないようコンテンツを構成するのだ。このように、動画メディアでは、音声情報を視覚に置き換える動きも広がっている。より分かりやすくはなるが、情報量はさらに増えるとも言えるだろう。

ではこうした傾向を、視覚に障害のある人たちはどう感じているのだろうか。

目が見えないと豊かな感性が身につきやすい?

劇作家の寺山修司が制作し1984年に放映された、ソニーカセットテープのラジオCMがある。作中、寺山は目の見えない若者たちが学ぶ文京盲学校を訪ねた経験を語り、「彼らは色を音で表現するんです」と言って、その例を挙げる。

「白い色はこんな音(蒸気機関車の汽笛の音が流れる)」「金色はこんな音(金属の鍋を叩く音)」。「鏡はどんな音」と訊くと、「絹糸の切れる音」という答えが返ってきた。

その表現は独特で、詩的で新鮮な印象を受ける。「目の見えない人々には、健常者が持っていない独自の感覚や感性の豊かさがあるのではないか」と感じさせられる。このCM作品は「ACCパーマネントコレクション(CM殿堂入り作品)」に選定され、今もYouTubeで視聴することができる。

それから40年後の現在、目の見えない若者たちはどのように世の中を聞き取っているのだろうか。