格闘ゲームのプレイは「音」で
取材をしていてもうひとつ驚いたのが、盲学校の生徒たちがテレビゲーム、それも対戦型の格闘ゲームを楽しんでいることだった。
生徒たちに「ふだんは何をして遊んでいますか」と聞くと、「ゲーム」「対戦ゲーム」という答えが返ってくる。健常者の高校生となんら変わりないが、彼らは音によってキャラクターの動きを聞き分けているという。
健常者はほとんど意識していないが、対戦ゲームではキャラクターの動きに常に効果音が伴っており、その音にもすべて異なる意味がある。パンチを打ったときの音とキックを放ったときの音は異なり、キャラクターが跳躍し、着地したときの「シュタッ」という音ひとつをとっても、キャラクターごとに違うのだ。
動作ごとに効果音がつき、その音が動作ごと、キャラクターごとに異なっているので、彼らは音の組み合わせによって攻防の様子を知り、「今、何が起こっているのか」を聞き取ることができるのだ。
ドラゴンボール、ストリートファイターⅡなど
ただし、すべてのゲームがそこまで細かく作り込まれているわけではない。
作り込みができていない、音的にチープなゲームは視覚障害者にはプレイできない。取材中、遊んでいるゲームとして生徒たちが挙げたのは『ドラゴンボール』や『ワンピース』のバトル系のゲーム、『ストリートファイターⅡ』の特定のバージョンなどだった。
『ストリートファイターⅡ』は左右に配置されたキャラクター同士が戦う、2Dタイプの格闘ゲームである。戦闘中にキャラクター同士が入れ違い、左右逆になることもある。
比較的初期のバージョンでは、キャラクターごとの効果音はモノラルで、右に配置されたキャラクターの音は右からだけ、左に配置されたキャラクターの音は左からだけ聞こえるようになっていた。それであれば彼らは、キャラクターが左右入れ替わったときにもすぐに聞き分けることができる。
しかしバージョンが上がっていくと、音響が健常者目線でリッチになり、両方のキャラクターの音が左右から同時に聞こえてくるステレオフォニックな作りになっていく。
そうなると生徒たちには、モノラルだったときには判断できた、音によるキャラクターの位置関係の判別ができなくなってしまうのだという。