動画視聴の先駆けだった「Yahoo!」のサービス

例えば2000年代初め、動画コンテンツの視聴サービスを最初に始めたプロバイダーの一つが「Yahoo!」だった。

当時はサブスクリプションの登場前で、テレビの上に置くセットトップボックスという装置を使って、「1本いくら」というオンデマンド形式が採用された。もちろん、そこでも「新作が高くて旧作が安い」という設定は残っていた。

ところがその後、Yahoo!のサービスは競合に押されて市場から消え、上述のような、これまでの常識を覆す価格体系がサブスクリプション市場を席巻していった。

なぜ、ネットサービスではリアルと価格体系が逆転しているのか。おそらくそこには、リアル市場とは異なる、ネット特有の力学や価値観の変化があったはずだ。

オンラインゲームは基本無料だが…

ネット上のサブスクリプションモデルとして、もう一つ注目されるのが「オンラインゲーム」だ。

周知の通り、オンラインゲームは現在、無課金でも遊べる「基本無料」のスタイルが主流だ。かつてはプレイが有料だった有名どころのPC用オンラインゲームも今は無料が増えており、スマホ用ゲームはほぼ全てが基本無料である。

モバイルゲームをプレイ
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ただしゲームの場合、最初は無料でも段階が進むに従って、アイテムやレベルの有料購入を促される仕組みであり、ビジネスモデルとしては比較的分かりやすい「フリーミアム理論」に則っていると言える。

「フリーミアム」とは米『Wired』元編集長のクリス・アンダーソンが、Web上で見られる特徴的なマーケティング手法の一つとして取り上げたものである(彼は同じく、大量の売れないニッチな商品の合計が、売れ筋商品の売り上げを超える現象である「ロングテール理論」を提唱したことでも知られている)。

「お試し」を入り口にファンが運営を支える

フリーミアムとは、サービスの一部を最初は無料で経験させ、何らかのプレミアムがほしい場合に料金を支払うというビジネスモデルであり、多くのネットサービスがこのスタイルを踏襲している。

このフリーミアム型サービスが普及した理由の一つが、ネットサービスでは限界費用が極限まで低くなるという点である。どういうことか。

例えば、リアルの世界でも試供品などの無料配布で商品を知ってもらう方法があるが、相応のコストがかかってしまう。一方、ネットでは物理的な制約がなく、追加負担なしで無料の「お試し期間」が存続できる。そこから、納得したユーザーが追加物(キャラやカード)を購入(課金)するモデルが広まっていく。これがフリーミアム理論で、オンラインゲームはこの理論に沿ったビジネスを展開している。