上司、同僚、部下の信頼がそろわないと失格

「『因』はすべて自分にあると認め、直していこうと思う以外ない」<br><strong>SBIホールディングス 代表取締役CEO 北尾吉孝</strong>●1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村証券、ソフトバンクを経て、現職。
「『因』はすべて自分にあると認め、直していこうと思う以外ない」
SBIホールディングス 代表取締役CEO 北尾吉孝●1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村証券、ソフトバンクを経て、現職。

これは、言葉を換えて言えば部下からの信頼がないということでしょう。仕事というのは一人でできるものではないので、上司、同僚、部下、さらには取引先からの信頼がそろい踏みでなければ、上司としては失格。そもそも上司の立場にいること自体がおかしいといえます。

部下から信頼がない上司の筆頭は、手柄はすべて自分、悪いのはすべて部下というタイプです。仕事でがんばって結果を出しても、どうせいいところだけ、あいつが取るんだと思われれば、上司、部下間の信頼どころか、人間としての信用も失われてしまいます。

「君子はこれを己に求め、小人はこれを人に求む」という『論語』の言葉にあるように、何かしら問題が起きたときに、あらゆること一切合切、自分の責任と思うのが君子です。ところが、小人になると、環境が悪い、周りが悪い、誰々が悪いと、すべてを人のせいにする。自分の責任を考えて反省し、人間性を直していこうと思うのではなく、最後は自分以外の人みんなが悪くなってしまうのです。こうなると部下どころか、誰一人としてついてこなくなります。

処方箋としては、部下になぜ慕われないのか、なぜ尊敬を得られないのか、なぜリーダーシップを発揮できないのか、自ら恥じて、自分自身を振り返る以外にありません。そして「因」はすべて自分にあることを認め、自らの意思で直していこうと発奮することです。

上司として、よし、わかったということでディシジョンメイキングをしたのであれば、責任はほかでもない自分にあることを深く認識して、責任を自分で取る。失敗したときの責任を取るだけではありません。うまくいったときには、むしろ部下の手柄にして引き上げてやる。部下から信頼され、慕われる上司になるには、そのくらいの度量が必要です。